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テレビ報道等が名誉毀損になる場合③ 事実摘示か法的評価か?

2018年2月15日

テーマ:民法雑学

コラムカテゴリ:法律関連

最高裁判所第二小法廷平成24年3月23日判決は、次のような事案で「法的評価」か「事実の摘示」かで、争われた事件です。

1 この件は,Bが、インターネット上に開設された誰でも閲覧可能なウェブサイトに、「臨時ニュース」と題する記事の中を書き、その中で、某新聞社の従業員Aが新聞販売店へ行った際、
(第1文)が「Aは、翌日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った。」(第2文)が「これは窃盗に該当し,刑事告訴の対象になる。」
との記載をしたことが、名誉毀損になるかどうかが争われた事件です。

2 原審が認定した事実
原審は、
(第1文)に関し、翌日の朝刊に折り込む予定であったチラシ類を持ち帰ったのは,Aではなく,新聞折込広告代理業を営むC社の従業員であり,しかも同従業員は,新聞販売店の所長の了解を得た上で,これを持ち帰ったものであった、と事実認定しながら、第1文は、本件販売店を訪れて取引中止を伝えたAが退出する際に店内にあった折込チラシを持ち帰った旨の事実を摘示するものであり,
第2文は,第1文で摘示した事実関係を前提としたBの法的見解を表明するものであり、
本件記事を閲読した一般の閲覧者は,Bが突然の取引中止の通告等を批判する趣旨で殊更に誇張した法的評価を加えていると受け止めるのが自然であって,直ちにAが現に「窃盗」に該当する行為を行ったものと理解する可能性は乏しかったから,本件記載部分によってAの社会的評価が低下したということはできない、と判示して、名誉毀損の事実を否定しました。

3 最高裁の判断
しかしながら、前記最高裁判決は、次のように判示して、名誉毀損の事実を認定しました。
「ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものである(最高裁昭和31年7月20日判決)。
 前記事実関係によれば,本件記事は,インターネット上のウェブサイトに掲載されたものであるが,それ自体として,一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し,評価するようなものであるとはいえず,本件記載部分は,第1文と第2文があいまって,某新聞社の業務の一環として本件販売店を訪問したAが,本件販売店の所長が所持していた折込チラシを同人の了解なくして持ち去った旨の事実を摘示するものと理解されるのが通常であるから,本件記事は,Aの社会的評価を低下させることが明らかである。そして,前記事実関係によれば,本件販売店の所長が所持していた折込チラシは,別会社のCが本件販売店の所長の了解を得た上で持ち帰ったというのであるから,本件記載部分において摘示された事実は真実ではないことが明らかであり,また,Bは,Aが勤める新聞社と訴訟で争うなど対立関係にあったという第三者からの情報を信用して本件サイトに本件記事を掲載したと主張するのみで,本件記載部分において摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当の理由があったというに足りる事実を主張していない。
そうすると,Bが本件サイトに本件記事を掲載したことは,Aらの名誉を毀損するものとして不法行為を構成するというべきである。」と判示しました。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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