取締役会の決議等の省略(書面決議)
2 基本原則Ⅰ ― 株主の権利・平等性の確保
基本原則1として書かれていることは、「1株主の権利・平等性の確保」というタイトルの下で、「上場会社は、・・・株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべき・・・また、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、・・・十分に配慮を行うべきである。」と書かれているが、「原則」と「補充原則」には、要旨として、①株主総会議案については早期に発送する、②ウェブサイトなどで公表もする、③総会の日程を適切にする、④議決権の電子行使を可能にする環境作りをする、⑤信託銀行などの名義で株式を保有する機関投資家が自ら議決権を行使することを希望する場合に配慮する、⑥株主総会で相当数の反対票があったときは、その株主との対話の要否を考える、⑦資本政策の基本的な方針を説明する、⑧いわゆる政策保有株式については、基本的方針の説明をする、⑨いわゆる買収防衛策は、必要性・合理性をしっかり株主に説明する、⑩支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす政策(増資、MBO等を含む)については適正な手続を確保し、かつ、株主に十分な説明をする、⑪役員や主要株主との取引をする場合の手続を定めた上で、監視を行うことなどが書かれている。
このうち、⑧の政策保有株式について一言すれば、政策保有株式とは、A社はB社の株式を保有し、B社はA社の株式を保有するという関係を想定すれば分かりやすいが、一般には、対象先との長期的・安定的な関係を構築ないし維持するための株式の持合いをいう。
政策保有株式は、良い面を強調すれば、事業上便宜が得られ、企業価値の向上に資するということになるが、悪い面を強調すれば、双方の会社とも、経営陣の保身的な意味が強いということになる。
本コードが上場会社に対し、その保有するいわゆる政策保有株式について「政策保有に関する方針」の開示を求めているのは、経営陣の保身のための政策保有株式ならば、それを手放すことを要求しているからである。
なお、2018年1月30日の日本経済新聞の記事「一目均衡」には、上場会社が保有する政策保有株式(持ち合い株式)の弊害は大きいと指摘されている。また、この記事では、持合い株を「日本の株式市場に残った最大の岩盤」との識者の言葉も紹介している。
⑩の支配権の変動や大規模の希釈化をもたらす資本政策(増資、MBO等)は、その必要性・合理性を株主に十分説明すべきであると書かれているが、この原則など、本コードが策定された日より2年後の2017年に起こった出光興産事件を予見したような規定である。