コラム
民法改正が賃貸借契約に与える影響 4 原状回復の内容は具体的に書く
2017年12月15日
1 原状回復費用には自然損耗分は入らない
改正民法621条は、「賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定しました。
これは、最高裁平成17年12月16日判決の法理を条文化したものです。
2 特約があれば、自然損耗分の原状回復義務も認められる
最高裁平成17年12月16日判決の法理は、要旨次のとおりです。
①賃借人が賃貸借契約終了により負担する賃借物件の原状回復義務には,特約のない限り,通常損耗に係るものは含まれず,その補修費用は,賃貸人が負担すべきであるが,これと異なる特約を設けることは,契約自由の原則から認められる。
②賃借人が通常損耗についても原状回復義務を負うのは、その旨及びその範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要である。
3 通常損耗補償特約の例
建物賃貸借契約終了後、畳の張り替えをするなどと借家人の義務が具体的に書かれている場合は有効ですが、たんに「原状回復負担区分表」(「項目」欄,「修復の基準になる状況」欄,「施工方法」欄及び「補修費用の負担者」欄を書いただけでは、具体的に書いたことにはならないとされています。
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