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独禁法って何だ?4 公取委から人がやってきたとき・独禁法と下請法との関係・下請法版リーニエンシー

2017年11月22日 公開 / 2017年11月25日更新

テーマ:菊池と後藤の会社法

コラムカテゴリ:法律関連

8 会社が公取委から事情聴取の申込みを受けた場合
「のう、後藤よ!会社にとっては、あまり嬉しくもないことだろうが、公取委から、事情聴取をしたい、などと言われる場合、どう考えてそれに臨むべきなのだい。」
「もし、会社が公取委からそのような申込みなり、会社訪問の通告があった場合は、会社としては、公取委は当該会社の取引先などから情報を入手し、独禁法違反又は下請法違反を疑う相当の証拠を握っていると考えて対応すべきだろうな。」

9 独禁法と下請法の関係
「のう、後藤!独禁法の補完法として、下請法(正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」)があるのは知っているが、公取委は、下請法の監督官庁でもあるんだよなあ。」
「そうだよ。独禁法は、優越的地位の濫用を規制しているが、より迅速に下請企業を救済する目的で、下請法が制定されたんだ。」

「では、独禁法と下請法の規制の在り方の違いはなんだい。
「独禁法は実質基準で、下請法は形式基準で審理されるという点で、違っているんだよ。」

「課徴金に関する在り方にも違いがあるのかい。」
「あるよ。独禁法は、優越的地位にあったかどうか、正常な商慣習に照らして不当な行為であったかどうかについて実質基準で審理されるので時間がかかるが、これに該当すると判断された場合は、課徴金を課すことになる。しかし、下請法は、形式基準で審理されるので時間はあまりかからず、また、下請法違反が認定されても課徴金までは課されないという違いがあるよ。」
「下請法では課徴金が課されないとなると、会社としては、下請法違反の認定を不満としてとりあえず無視するという姿勢をとる場合もあろうじゃないか。その場合は、公取委はどういう態度をとるのかのう。」
「その場合は、下請法ではなく、独禁法違反で審理をすることになるだろうなあ。」
「では、会社としては、下請法では課徴金は課されないと考え、高をくくっていると、今度は公取委から独禁法違反に問われ、課徴金が課されるというリスクが生ずるということかい。」
「そうだよ。だから、法的拘束力のない勧告とはいえ、下請法の勧告は、事実上、親事業者を拘束するよ。」

10 下請法
「ふ~ん。下請法は、どういった経済情勢下でできた法律だい。」
「下請法が制定されたのは、昭和31年だ。時あたかも高度経済成長期(昭和30年から昭和48年)が始まった時期だ。建設業界をはじめ、業界は活況を呈し、そのぶん親事業者の下請代金の支払遅延などの、優越的の地位の濫用が目立った時期になるわなあ。それだけ、規制の必要が大きくなったということだよ。」

「ところで、後藤よ!下請法が適用される取引形態には、どんなものがあるんだい?」
「製造委託、修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託の4種類だよ。」

「下請法違反の行為とは?」
「次の一覧表のとおりだよ。なお、4条1項は、当該行為をすること自体が原則として違反とされるのに対し、2項は、当該行為によって下請事業者の利益が不当に害される場合に違反になるのだ。2項の行為は、いわばグレーゾーンといえる行為になるよ。」

下請法4条1項関係
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、又は、正当な理由がないのに、
①下請事業者の給付の受領を拒むこと。
②下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。
③下請代金の額を減ずること。
④下請事業者の給付を受領した後、返品すること。
⑤通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
⑥自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。
⑦下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

4条2項関係
①下請代金の弁済期前に、下請事業者が支払うべき原材料等の対価の全部若しくは一部を控除すること。
②金融機関から割引を受けることが困難な手形を交付すること。
③自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
④下請事業者の給付の内容を変更させ、又は給付をやり直させること。


11 下請法違反の場合の措置

「では、下請法違反とされた場合、公取委からとられる措置とは、具体的にはどんな措置なんだい。」
「公取委が、下請法違反の認定をしたら、親事業者に対し、下請事業者へ損害賠償請金及び年14.6%もの高利の遅延損害金を支払うよう、勧告する。前述のように、公取委の勧告に従わない場合において、独禁法違反で審理され、独禁法違反と認定判断されるときは、会社は、課徴金まで課される可能性が高くなるよ。」
「具体的な事例としてだが、親事業者が下請法に違反して、損害賠償と遅延損害金の支払の勧告がなされたケースで金額の高いものはどのくらいだい。」
「最近、会社に損害賠償をするよう勧告された金額が約25億7千万円で、遅延損害金が約13億2千万円(合計約40億円)というケースもあったよ。」

「会社名の公表はあるのかい?」
「以前にはなかったが、現在は会社名が公表されるようになっているぞ。公表されることによる社会的信用の失墜リスクは大変大きいので、注意を要するよ。」


12 下請法版リーニエンシー
「下請法では、独禁法での課徴金の減免と同じような、勧告免除の道はないのかい?」
「あるよ。公取委は、① 公取委が調査に着手する前に、違反行為を自発的に申し出ている。② 違反行為を既に取りやめている。③ 下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置を講じている等の事由がある場合には、勧告そのものをしないことにしているよ。これは、下請法版リーニエンシーとよばれているが、親事業者がうっかり下請法違反をしていることが判明した場合には、この制度を活用すべきだろうなあ。」

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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