社外取締役の有用性
5 課徴金の対象となる行為と課徴金額
「課徴金が課せられるという場合、どのくらいの金額になるのかのう。」
「課徴金は、ホームページを見れば分かるが、独禁法違反行為の実行期間(最長で直近の3年間)における、売上額に対する一定の割合になるので、大きな金額になるよ。数億、数十億円規模も珍しくはないわなあ。国際的なカルテル事件では、数百億円もあるよ。もっとも、現在の課徴金の算定は画一的なところがあるので、算定方法の見直しが検討されているがな(公取委「課徴金制度の概要と見直しの視点」平成28年2月23日」)。
6 課徴金の減免措置(リーニエンシー)
「ところで、後藤よ!独禁法に定められた課徴金については、減免措置もあるようだが、どういう制度だい。」
「課徴金の対象になるカルテルや入札談合の独禁法違反は、事の性質上、秘密裏に行われるため、公取委の証拠集めが困難で摘発が難しいという問題があるのは分かるわなあ。そこで、公取委に、自主的にこれら違法行為を自白(報告)した場合には、課徴金の全部又は一部を免除してあげようという制度ができたのさ。これを課徴金減免制度といい、“リーニエンシー”とよばれているんだ。」
「もう少し、詳しく説明してくれ!」
「課徴金の減免には段階があってな、1番先に申し出た会社は、課徴金の全額が免除され、2番目に申し出た会社は50%の免除を受け、3番目は 30%減額されるという制度だよ。4番目、5番目も30%減額の対象になりうるが、その場合は、公取委が把握していない違反行為の事実を報告しなければならないことになっていてね、課徴金減免の要件が厳しくなるよ。6番目以下は、減免なしだ。この制度は、カルテルの場合などでは、仲間を早く裏切った方(密告した方)がより有利になるという仕組みになっている点で、わが国の文化に馴染むのか疑問はあるがね。しかし、すでに導入されているアメリカやヨーロッパでは、カルテル等の摘発に、けっこう威力を発揮しているようだよ。わが国も、リーニエンシー制度は、平成17年の独禁法改正の時に導入したが、その効果は絶大で、公取委のホームページを見ると、カルテル等の違反件数は大幅に減少していることがよく分かるよ。なお、カルテル等以外の独禁法違反にかかる課徴金については、リーニエンシーは適用されないぞ。」
7 カルテル等の防止に関する内部統制システムの構築義務
「のう、後藤よ。株式会社の取締役は、部下がカルテル等をしていることを知った場合、それらを止めさせるのは当然だとして、カルテルの発生そのものを防止する義務もあるんだよなあ。」
「そうだよ。実は、最近、某会社の株主が、会社の取締役や元取締役らに対し、彼らが会社のカルテルを公取委に報告し、かつ、課徴金の減免申請をすれば、課徴金の減免を受け得たのにそれをしなかったという理由で、67億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を大阪地裁に提訴したケースがあった(和解で解決)。このケースは、当時マスコミ等で話題になったが、これからは、取締役等の役員は、同様の訴訟が起こされるおそれが出てきたので、そのリスクを避けるため、これに対応した、カルテル等の防止に関する内部統制システムを構築する必要があるね。」
「カルテル等の防止に関する内部統制システムの構築というのは、具体的にはどのような問題なんだい。」
「会社にカルテル等を早期に発見するためのオーダーメードの内部統制システム構築し、カルテル等のあることが判明した場合は、迅速に課徴金減免申請を行うためのシステムの構築のことだよ。」