公用文の書き方 5 “動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書く”と覚えるべし
Q
貴著 「公用文と法令に学ぶ 漢字と仮名・使い分けの法則 」 のサブタイトルである、「漢字は歌舞伎役者、仮名は黒子」の意味を教えてください。
A
表意文字である漢字には、それぞれ他と違った固有の意味が宿っています。
文や文章の中で、漢字固有の意味を、生き生きと伝えたいと思う場合は、その漢字を書き、漢字で書いても、固有の意味が生きて働いていない場合は、仮名で書く、というのが、漢字と仮名・使い分けの法則ですが、その漢字固有の意味を、“個性”と言い換えれば、漢字は、個性が際立つ歌舞伎役者になぞらえることができ、仮名は、個性を殺した黒子になぞらえることができるでしょう。
これが、拙著のサブタイトルにした 「漢字は歌舞伎役者、仮名は黒子」 の意味です。
なお、昨日のコラムでは、熟語を取り上げましたが、熟語は、すべてが漢字から成っているというものではありません。
例えば、「思わく」という熟語は、語源が「思わくば」ですので、「思惑」と書くと間違いです。
「思わく」の意味は、考えや意図ですが、その中には「惑い」の意味はありません。
ですから、「思わく」を「思惑」と書くと間違いなのです。
「大辞泉」にも、「思惑」の「惑」は当て字であると書かれています。
このように、書かれた漢字固有の意味と、熟語の意味が矛盾する場合、多くは当て字になりますので、注意が要ります。
漢字は歌舞伎役者、仮名は黒子と思うべし、なのです。