遺留分法理③ 遺贈(ここでは相続分の指定)+贈与により侵害された遺留分額の計算法理
現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。
この字句から、遺言執行者を相続人の代理人であると考える人が、一般の人だけでなく、弁護士の中にも多数いて、それが、遺言執行者は、遺言書の内容に不満を持つ相続人の代理人なのであるから、中立・公正な遺言執行をすべき義務をすべき義務がある(要は、一部の相続人に不利益となる遺言執行をしてはならない義務がある)といった、本末転倒というべき発想をもって、遺言執行者の前に立ちはだかり、遺言執行の妨害をする者が多数出てきております。
そのためか、法制審議会民法(相続関係)部会第9回会議(平成28年1月19日)に、増田勝久委員,山田攝子委員及び金澄道子幹事から提出された「遺言執行者の権限の明確化等」と題する書面には、現行の民法1015条に字句を改めるべく、次の問意見が提出されています。
「6 遺言執行者の地位(民法1015条関係)
遺言者の意思をその死後に実現することを職務(任務)とする遺言執行者の地位に応じた適切な規定ぶりに改めるべきである。
現行法は遺言執行者を相続人の代理人とみなすと規定しているが,これを文字どおり捉える相続人との間でトラブルが生じることが少なくない。この規定は遺言執行者の行った行為の法的効果が相続人に帰属することを示すものと解されるが,一般市民に誤解を与える規定ぶりである。
そのため,遺言者の意思をその死後に実現することを職務(任務)とする遺言執行者の地位に応じた適切な文言に改めるべきである。たとえば,「遺言執行者が行った意思表示は,相続人に対して効力を生じる」とすることなどが考えられる。」