改正法の下では、特別損害の範囲が変わる 主観から客観へ
目的や動機、契約に至る経緯を書くことの重要性
これは、以前(2014-01-06)、コラムに書いたことですが、 最高裁平8.11.12判決は、原審高裁判決を破棄して、リゾートマンション1室を購入した買主が、その売買契約と同時に、同マンション内に設置が予定されていた屋内プールを含むスポーツ施設を利用する会員契約を結んだものの、室内プールなどが予定された時期に完成していないため、売買契約を結んだ目的が達成できないとしてした、マンションの売買契約及び会員権契約の解除を有効だと判示しました。
この判決は、詳細な事実関係を指摘しつつ、「同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった二個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて,社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができるものと解するのが相当である。」と判示して、買主からの契約解除を認めたのです。
この事案などは、リゾートマンション(一棟の区分所有建物内の一専有部分)の売買契約と、同じ一棟の中のスポーツ施設を利用する会員契約とが、相互に密接な関連のあることは明らかですので、最高裁判決は当然というべきですが、すべての契約が、契約書の内容から、その目的動機が明らかにされているとはいえません。
ですから、契約書に契約の動機や目的を書いておくことは、重要なのです。
もしこの事案で、契約書に動機又は特約事項として、「室内プール、テニスコートなどの施設の利用ができること」と書いておれば、原審でも、かんたんに勝訴したものと思われます。
なお、一般的には、契約書の本文の前の前文の中で、より具体的な文言で目的を書くことが望まれます。
リゾートマンションの売買契約の場合だと、
「売主(以下「甲」という。)と買主(以下「乙」という。)とは、乙がスポーツ施設を利用して快適なリゾート生活を送ることを目的として、以下のとおり、・・・につき売買契約を締結する。」
などが考えられます。