抵当権と税金の優劣関係
離婚による財産分与として不動産を取得した場合でも、不動産取得税はかかるのですか?
かかる場合は、どのくらいの税額になるのですか?
場合によりけりだと思います。以下説明いたします。
1 課税対象の「不動産の取得」概念
地方税法73条の3第1項は、「不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産所在の道府県において、当該不動産の取得者に課する。」と規定しています。
不動産の取得には、原始取得と承継取得があります。
「家屋が新築された場合」(前同条2項)や、「家屋を改築したことにより、当該家屋の価格が増加した場合」(同3項)は原始取得になります。財産分与は、承継取得の一態様です。
2 共有物分割などの形式的な移転は、課税対象にならない
同方73条の7は、形式的な所有権の移転については、不動産取得税を課さないことにしておりますが、「相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得」(同条1号)、「法人の合併又は政令で定める分割による不動産の取得」(同条2号)や、「共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)」(同条4号)などがこれに当たります。
3 財産分与の性格
離婚に伴う財産分与には、(1)清算的性格、(2)扶養的性格、(3)慰謝料的性格がありますが、多くは、①の清算的性格があるものです。
ですから、財産分与の中身が(1)の清算的なものであれば、不動産取得税は課されず、(2)の扶養的要素や(3)の慰謝料的要素があれば、不動産取得税が課されることになりますので、不動産を財産分与で取得される場合には、事前に都道府県に問い合わせることをお勧めします。
なお、これは不動産取得税の話しではありませんが、不動産の財産分与をした場合、分与をした方に、譲渡所得課税がなされます。
4 課税標準
不動産取得税の課税標準は、原則として、取得時における不動産の価格すなわち適正な時価とされています(地方税法第73条第5号)。
具体的には、不動産が市町村における固定資産課税台帳に価格が登録されている場合は、その価格を用いるものとされています(地方税法第73条の21第1項)。
新築家屋など固定資産課税台帳に登録されていない場合や増改築、地目の変更等で固定資産課税台帳の価格によることが適当でない場合は、固定資産税と共通の固定資産評価基準によって価格を決定する(同条第2項)ことになります。
5 税率
都道府県によって異なるものと思われますが、標準税率は4%です。税金は、都道府県から送付される納税通知書によって納めることになります(普通徴収)。