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大切にしたいもの 徳義

菊池捷男

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テーマ:大切にしたいもの

正直であること、嘘をつかないこと、ごまかさないことは、人が人として生き抜くうえで、最も重要な徳目であると思われます。

哲学よりも徳義を学べ

 この言葉は、たしか小説「クオ・ワディス」を書いたシェンキェーヴィチ の言葉と記憶していますが、この小説は,紀元1世紀の古代ローマ時代を舞台に書かれたもので、ローマ帝国の捕虜になった主人公リギ族の王女であるリギアが、偶然、貴族であるウィニキウスの目に留まるところから物語が始まります。
 ウイニキスは、リギヤのギリシャ的、彫像的な美しさに惹かれます。そして、そのリギヤを得たいと渇望するようになり、叔父ペトロニウスに相談するのですが、ペトロにウスは、皇帝ネロの寵臣です。ネロの権力を利用して、リギヤを、保護され家族同様に扱われていた貴族のアウルス・プラウティウス一家から、皇帝の住む王宮に、有無を言わせず連れ出し、そこからウニキウス邸へ送ろうとするのです。
 しかしながら、リギアは、王宮に連れ去られた日の夜の宴会の席で見た、皇帝や寵臣たちの悪徳の限りを尽くした生態に驚き、恐怖を抱き、翌日ウイニキウス邸へ連れ去られる機会に、リギアの忠実な僕であるウルススやキリスト教徒たちの手を借りて、逃走するのです。
 その後、ウイニキウスは、心からリギアを愛していることを知り、ネロの権力もペトロニウスの力も借りず、一人でリギヤを捜し求めます。
 このときに、顔を出したのが、ギリシャ人で哲学者を名乗るキロンです。
キロンは、リギアがかつて魚の絵を描いていたという一事から、その絵に込められた意味を解き、推論に推論を重ねてリギヤの行方を突き止めていくのですが、キロンに言わせば、それが哲学の力ということになります。
しかしながら、キロンは、友人(医師)を強盗に襲わせて瀕死の重傷を負わせて捨て去り、その財産を奪い、かつ、友人の妻子を奴隷として売り飛ばした過去を持つ悪徳漢です。
 哲学よりも、徳義を学べ、というシュンケビッチの言葉は、この哲学者に向けた言葉です。
 なお、小説「クオ・ワディス」では、このようなキロンでしたが、彼の人生は大きく変わります。キロンは、リギアの行方を追ううちに、キリスト教徒たちの生き方を見、使徒ペテロやパウロに接し、また、かつてキロンが裏切った友人(医師)から命を助けられたうえ、“我、汝を赦す”と言われたことなどから、心に変化をきたしていたのですが、ローマの大火の犯人とされ、闘技場で生け贄にされる、キリスト教徒たちの、あまりに残酷な見世物として死を目にして、突然、多くのローマ人に向かって、皇帝ネロが最も恐れること、すなわちその悪行を告発するのです。その結果、キロンは、火あぶりにされるのですが、キロンの心は、その瞬間が、最も豊かで、かつ、平静であったようです。
 哲学よりも、徳義を学べ。教えられる言葉のように思われます。

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