公正証書遺言の数
認知とは?
認知とは、父が非嫡出子との間に親子の関係を築く意思表示のことです。
認知は、父が自らの意思表示でする「任意認知」と、子が訴訟を起こして裁判所に父の子と認めてもらう「強制認知」があります。
また、父がする任意認知には生きている間にする「生前認知」と遺言でする「遺言認知」があります。
裁判で認知してもらう強制認知は、父が生きている間にする「生前認知」と父の死後訴訟を起こして認知してもらう「死後認知」があります。
認知された子の相続分は、現在、嫡出子と同じです。
遺言による認知は、遺言執行者が遺言執行としてします。
その場合で、遺産分割がまだなされていない場合は、非嫡出子として遺産分割に当然参加できます。
認知された時すでに遺産分割が終わっている場合の価額請求問題
民法910条は「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」と定めていますので、遺産分割のやり直しを求めることはできません。
認知された子の相続分に相当する「価額」を請求できるだけになります。
価額の基準日
認知された非嫡出子が価額を請求する場合の価額とは、いつの時点の価額か?
また、価額請求権について、いつから遅延損害金の請求ができるか?については、下記の判例があります。
最高裁判所第二小法廷平成28年2月26日判決
相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は,価額の支払を請求した時であると解するのが相当である。
なぜならば,民法910条の規定は,相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには,当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認めることによって,他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものであるところ,認知された者が価額の支払を請求した時点までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともに,その時点で直ちに当該金額を算定し得るものとすることが,当事者間の衡平の観点から相当であるといえるからである。・・・
また,民法910条に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は,期限の定めのない債務であって,履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当である。
小問題
⑴ 被相続人に債務があった場合、価額請求権から債務は控除すべきか?
A
負債は控除できません。
負債を控除しなくとも、非嫡出子は、負債も法定相続分の割合で相続し、債権者へ支払う義務があるのですから、ここで、債務を控除する必要はなく、仮に、この時点で相続人のうちの誰かが負債を全額すでに弁済しておれば、そのうちの非嫡出子の負担分については清算を求めることができる(不当利得返還請求権の行使)ので、負債を控除する必要はないからです(福岡高裁昭和54.12.3判決は)。
⑵ 価額請求権はいつまで行使できるか?
5年で消滅時効にかかりますので、⑤年間です。
すなわち、遺産分割請求権は消滅時効にかかりませんが、遺産分割が終了した後でする、認知を受けた非嫡出子がする価額請求は、消滅時効の対象になります。
その期間は、認知されたときから5年間です。
民法884条前段で「相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」との規定があることから、これに準じて5年間とされているのです。