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「相続させる」遺言法理② 不動産を「相続させる」遺言では、受遺相続人自らが登記手続をする

2017年1月24日

テーマ:相続判例法理

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

 最高裁第二小法廷平成3年4月19日判決(香川判決)は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」と書かれた遺言は、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるという法理を確立しました。
 この法理の下では、この遺言による不動産の相続人は、遺言執行者の関与なくして、直接、相続登記ができることになりますが、はたして、その後、下記判例が、そのことを明らかにしました。

最高裁第三小法廷平7年1月24日判決
 本件遺言は、本件各不動産を相続人である甲に相続させる旨の遺言であり、本件遺言により、甲は・・・の死亡の時に相続により本件各不動産の所有権を取得したものというべきである(最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決参照)。そして、特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに相続により当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負うものではない。

 これらの判例を受けて,不動産登記実務においても,特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」と書かれた遺言書があれば、それを登記原因証書として、直接、受遺相続人が単独で相続登記手続をとることができ、遺言執行者は相続登記手続ができないものとされるに至っております。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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