立法論としての相続法③ 配偶者の居住権の保護
しかしながら,相続放棄は,詐害行為になりません。
下記の判例があるからです。
ですから,遺産分割協議で,具体的相続分に満たない遺産を受けるのではなく,相続放棄をしてしまった方が,債権者から差し押さえられるおそれはなくなります。
すなわち,最高裁第二小法廷昭和49年9月20日判決は,「 相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいつても、また法律上の効果からいつても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によつてこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」と判示しているのです。