使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
1 労働契約法20条
労働契約法第20条は,
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
との規定をおいています。
2 平成28年11月2日東京高裁判決
同判決は,
定年退職前の労働(無期契約労働者)と定年退職後の労働(有期契約労働者)が変わらないのに,賃金が20%から24%も減額されたことは,労働契約法20条に違反するので無効であるから退職前の基準で給与を支払えという訴訟を起こした従業員に対し,その請求を認めませんでした(一審の東京地裁は認めた。)。
理由は,
⑴ 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違が不合理なものであることを禁止する趣旨の規定である。
⑵ 労働契約法20条は,労働条件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として,〔1〕職務の内容,〔2〕当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,〔3〕その他との事情が広く認められている。
⑶ 控訴人が定年退職者に対する雇用確保措置として選択した継続雇用たる有期労働契約は,社会一般で広く行われているものであり,従業員が定年退職後も引き続いて雇用されるに当たり,その賃金が引き下げられるのが通例であることは,公知の事実であるといって差し支えなく,独立行政法人労働政策研究・研修機構の平成26年5月付けの「高年齢社員や有期契約社員の法改正後の活用状況に関する調査」結果によれば,企業全体の傾向として,継続雇用制度を採用する会社が多く,その多数が,定年前後で継続雇用者の業務内容並びに勤務の日数及び時間を変更せず,継続雇用者に定年前と同じ業務に従事させながら,定年前に比べて賃金を引き下げていることが認められること,被控訴人の属する業種(運輸業)又は規模の企業についてみても,定年到達後の継続雇用者の仕事内容,所属部署並びに勤務の日数及び時間については「定年到達時と同じ仕事内容」とするものが87.5パーセントであり(運輸業の平均),「定年到達時点と同じ部署及び勤務場所」とするものが90パーセント超(従業員数が50人~100人未満の企業の平均)であり,「フルタイム(日数も時間も定年前から変わらない)」とするものが84.6パーセントである(運輸業の平均)。他方,年間給与に関しては,定年到達時の水準(手当や賞与等を含む。)を100とした場合の継続雇用者の水準(該当者の平均)についての回答結果は,平均値が68.3,中央値が70.0(なお,従業員数が50人から100人未満の企業の平均値は,70.4である。)であって,大幅に引き下げられていることが認められる。
⑷ したがって,控訴人は,本業である運輸業については,収支が大幅な赤字となっていると推認できることを併せ考慮すると,年収ベースで2割前後賃金が減額になっていることが直ちに不合理であるとは認められない。
というものです。