遺留分減殺結果と異なる,相続財産の分割をした場合の課税関係
Q
被相続人が保有する同族会社の株式を,従業員持株会を設立して,そこへ売買するのも,有効な相続税対策になると聞きましたが,どういうことですか?
A
1 相続税対策
相続開始前に従業員持株会を設立して,被相続人となる人の株式の一部を当該従業員持株会に譲渡することにより相続税の節税効果を見込むことができるのは,会社が自己株式の取得する場合と同様に,相続対象財産を減らすことができるからです。
持株会社(少数株主)へ売却するメリットは,株式を配当還元方式で評価できるようにすることにあります。なお,配当還元方式での評価額,は,原則的評価方法である類似業種比準方式や純資産価額方式での評価に比べて著しく低いものとなります。つまり,従業員持株会の会員が少数株主になるようにして,配当還元方式で評価できるようにするわけです(従業員持株会に同族株主などが含まれないようにする必要があります)。具体的な評価額は税理士に計算していただく必要がありますが,配当還元方式によれば,1割配当をしている場合であれば株式の額面金額が評価額になろうかと思います。
このような低い価格が税法上の評価額とされれば,譲渡人に譲渡所得課税がなされることは,ほとんどなくなりますので,これもメリットといえるかもしれません。
2 従業員が退職する場合,株式を持株会で買い取る規約を作ること
また,従業員持株会の設立にあたっては,その規約をどのようにするのかにも注意をする必要があります。従業員持株会の会員である従業員が退職するときには,当該従業員の株式を従業員持株会が(強制的に)買い取るという規定にしておくのが通例です。このようにしておかないと,株式が持株会外に分散してしまうからです。このときの買取価格について議論がありますが,概ね従業員の取得価額と同じ価額で買い戻すとするのが実務のようです。
ただ,従業員持株会は従業員の財産形成に寄与することを目的としていますので,配当などを全くしないようなことがあると,この実務についても議論の余地はあるのかもしれません。このあたりは,注意すべき点になろうかと思います。