相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権に関する判例紹介)
1 遺産分割にどう関係するか?
“まだあるはずだ”という遺産が預金の場合,預金は遺産分割の対象にならず,遺産分割の影響を与えませんので,その預金は除外して遺産分割をすることは可能です。ただし,その預金があることで,各相続人の具体的相続分が変わってくるときは別です。
具体的相続分に影響を与えるのは,特別受益相続人や寄与相続人がいるときです。
そのときは,具体的相続分の計算のためにも,その預金の存在を調査する必要が生じます。
“まだあるはずだ”という遺産が預金以外の遺産であれば,当然遺産分割の対象になる遺産ですので,調査をする必要があります。
2 “まだあるはず”の遺産が明らかにされない場合
“まだあるはず”の遺産が,具体的相続分に影響を与える場合も,遺産分割の対象になる場合も,遺産の調査は必要ですが,調査をしても,その遺産が明らかにされない場合があります。その場合,つまり,“まだあるはずだ”という主張だけで,遺産が特定されない場合は,その幻の遺産を除いて遺産分割をすべきです。
幻の遺産が,姿を現してきたときに,その遺産について,新たに遺産分割をすることができるからです。
なお,この問題は,私が遺産分割調停事件の相続人代理人を務めたときも,家庭裁判所の調停委員を務めてときも,数多く経験しましたが,調査をすれば,預金や証券会社に預けている有価証券などが新たに出てくることもありました。ですから,調査は欠かせません。しかし,調査をしても何もでてこないという場合も多々あり,そちらの方が圧倒的に多いようですので,一定期間が経過しても新たな遺産が発見できない場合は,それを除外して遺産分割を進めるべきです。