契約書 第三者のためにする不動産売買契約
1 請負契約と委任契約の違い
請負契約ならば,①仕事が完成しないと,報酬が請求できず,①完成しても瑕疵があるときは瑕疵担保責任を負うのに対し,
委任契約ならば,③完成しなくとも,仕事をした分の報酬が請求できる上に,④瑕疵担保責任を負うことはありません。
2 コンピュータープログラムの作成委託契約は,請負契約
コンピュータープログラムは完成しない限り,使い物にならないし,瑕疵があれば,契約解除や修補請求ができるものですから,請負契約です。
3 「委託」契約という文言が招いた誤解
ここに,注文者甲がいて,コンピュータープログラム作成業者乙がいて,甲と乙間に,「コンピュータープログラムの作成委託契約」を結んだ事例があります。契約書は,無いに等しい,簡単なものでした。そのため,その契約を,「請負」契約であると考えた甲と,「委任」契約と考えた乙の間の,考えの相違から,トラブルが続出しました。
最初のトラブルは,乙が,契約目的であるコンピュータープログラムの作成を完了したとして,それを,甲のコンピューター内に使用できるようにする作業を始めるにあたり,「コンバート作業代金」という名目での費用の請求をしたときに起きました。
甲としては,納入のあったコンピュータープログラムのテストもしていない段階,したがって,乙がなすべき請負仕事の完成も確認できない段階で,しかも,約束もしていなければ契約書にも記載されてもいない「コンバート作業代金」に納得できないことはいうまでもありません。
乙の言い分は,契約は,コンピュータープログラムの作成の「委任」であり,「コンバート作業」は別の「委任」になる,というものだったのです。乙のいう「委任契約」の根拠は,契約書の題名が「コンピュータープログラムの作成委託契約」と書かれていたことにあったようでした。
4 教訓
たしかに,一般に,契約書に,「業務委託契約」と書かれた契約の場合は,「委託」が「委任」に通じやすいところから,「委任契約」と誤解されるかもしれません。
しかしながら,コンピュータープログラムの作成は,前述のように請負契約ですから,契約書に明確に約束されていない限り,完成前には,種々の名目を立てた報酬や手数料が請求できるものではありません。
この件の甲は,乙に前述のような誤解を与えないためには,契約書の題名を,「コンピュータープログラムの作成請負契約」とした上で,
契約書の中味としても,
①「仕事を完成しないと報酬を支払わない」ということ,
➁ 報酬は,コンピュータープログラムの完成の対価であり,仕事の完成は,乙のいう「コンバート作業」やエラーやパグが出たときの補正等をクリヤして,完成検査に合格したときであること,及び,
③ 仕事の完成後であっても,一定期間(瑕疵担保期間)内に,瑕疵が発見された場合は,乙が無償で修補すること
を明確に定めておいておけば,今回のようなトラブルは避け得たと思われます。
むろん,それを定めていない現在の契約書でも,甲の言い分が通らないというのではありませんが,契約書に以上のことを明記しておけば,乙から,契約書に書かれていない費用の請求を受けることはなかったと思われます。
(続く)