契約書 第三者のためにする不動産売買契約
(1) 交換の特例制度
個人も,法人も,棚卸資産ではない固定資産である宅地と宅地を交換した場合(建物と建物の場合も同じですが,実務的にはほとんどが宅地と宅地),等価交換であれば,原則として圧縮記帳による課税の繰延が利用できます。
(2) その場合の交換契約書の2案
(甲案)
第○条 甲の提供する⑴の宅地と,乙の提供する⑵の宅地を等価で交換する。
2 甲の提供する⑴の宅地は金1億円と評価し,乙の提供する⑵の宅地も金1億円と評価する。
3 交換差金は授受しない。
(乙案)
第○条 甲の提供する⑴の宅地と,乙の提供する⑵の宅地を等価で交換する。
2 交換差金は授受しない。
(3)印紙税額
甲案の契約書に貼付する印紙税は6万円です。契約書は通常2通作りますので,合計12万円かかります。
乙案の契約書の場合は,印紙税は200円,契約書2通で400円ですみます。
(4)印紙税額計算根拠
印紙税は,契約書に記載された金額を課税標準として課税され,記載金額のない第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)の場合(例:上記の乙案の場合)は200円ですみますが,交換対象物の双方の価額記載金額が書かれている場合(例:上記甲案の場合)は,いずれか高い方(等価交換のときはいずれか一方)の金額が課税標準になり,上記契約書甲案の場合は6万円かかります。
因みに,交換差金のみが記載されているときは,当該交換差金がそれぞれ記載金額になりますので,時価額を契約書記載金額にするよりは,印紙税は安くつきます。
(5)契約書甲案の2項は,必要な規定なのか?
もともと,交換契約には,交換に供する物の評価額を表示する必要はありませんが,交換契約において,交換差金を授受する場合は,その交換差金が圧縮記帳の要件を満たしていること(交換対象不動産のうちの高い方の時価の20%以下)を明らかにするため,時価評価額を書く場合があります。ですから,上記の甲案及び乙案のように,交換差金の授受のない交換(等価交換)契約の場合は,それだけで圧縮記帳要件を満たしており,時価評価額を契約書に書く必要はありません。
つまり,甲案の2項は記載の必要のない規定なのです。
(6)必要のない規定を設けて,印紙税を増やすべからず
甲案の2項は,書く必要のない,印紙税のみ増加する規定になっております。
これは,必要のない条項を設けて,印紙税を多額なものにした例です。
【参照】 国税庁のホームページより
一 No.3502 土地建物の交換をしたときの特例
[平成27年4月1日現在法令等]
1 制度の概要
個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。
2 特例を受けるための適用要件
(1) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。
(2) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。
(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
(以下,一部省略)
(6) 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。
3 注意事項
(省略)
二 土地交換契約書に貼付する印紙の金額(印紙税額)
【照会要旨】
次の土地交換契約書は、どのように取り扱われるのでしょうか。
①の契約書は,第1条で土地と土地の交換をする約定及び第2条で交換差金は生じないことの確認を書いた条項からなる契約書 (筆者註ー前記乙案)
➁の契約書は,第1条で土地と土地の交換をする約定,第2条で交換に供する双方の土地の評価額(700万円と950万円)を定める条項,第3条で甲から乙に対し交換する土地の評価額の差額(250万円)を支払うことを約した条項からなる契約書(筆者註ー前記甲案)
【回答要旨】
①の文書は、記載金額のない第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)です。
➁の文書は、記載金額950万円の第1号の1文書です。
土地の交換契約書は、土地の所有権を移転させることを内容とするものですから、第1号の1文書に該当します。
交換金額が記載されていないときは、記載金額のないものになります。
交換対象物の双方の価額が記載されているときはいずれか高い方(等価交換のときは、いずれか一方)の金額が、交換差金のみが記載されているときは当該交換差金がそれぞれ記載金額になります。
【関係法令通達】
印紙税法基本通達別表第一第1号の1文書の5
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。