コラム
自治体の契約能力を疑わせる,最高裁判決事件⑤ ー 餅は餅屋につかせること
2016年2月19日
1 自治体が所有する公有土地(普通財産)の,民間企業による活用
これは,これからの課題です。
自治体が,収益を上げ,利益を確保しながら,公共性の高い事業を行うことは,まずは不可能でしょう。収益性を高め,利益を上げることと,公共性を高めることは矛盾するからです。
ですから,これからは,公有地(普通財産)を活用する場合,収益性や効率性は民間に任せ,自治体は,自治体の費用負担において,民間に公共性の確保を求めるしかないと思われます。その場合で,公共性の高い事業をしようとするとき,自治体が民間に公有地をマイナス賃料で貸すこともあるだろうと思えます。
いずれにせよ,事業は民間にさせないと,うまくいかないでしょう。
2 自治体職員に商売をさせるのは酷
自治体職員は,極めて優秀です。しかし,事業や商売が上手かといえば,じつにへたくそ,というのが,二度,自治体の包括外部監査人を務めた筆者の感想です。
しかし,それはなにも自治体職員に事業や商売の能力がないというのではありません。自治体職員の属性として,収益や利益を考えない体質が生まれているからです。仮に,自治体が,例えば,道の駅で地産の物品を販売する仕事をするとした場合,職員は,利益よりも,住民を平等に扱うという発想の下で,仕事をすることになるはずです。そこには,民営でするものと違った成績になるはずです。
商売は民間がし,自治体は直接すべきではないのです。
2 契約も専門家に任せること
契約も,専門家に任せるべきでしょう。意思と字句が一致しないような契約条項を書くべきではありません。その専門家として,自治体は,インハウスローヤーを雇用(任期付き公務員として採用)し,契約実務を担当させるべきでしょう。
そうしないと,今回の最高裁判決事件の轍を踏むことになるのではないかと思われます。
3 餅は餅屋に
要は,事業の経営は民間に任せ,契約書は弁護士(インハウスローヤー)に作成させることです。餅は餅屋につかせることです。
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