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コラム

保証債務履行のための借入金を返すために,不動産譲渡した場合の非課税所得

2016年2月9日

テーマ:民法と税法

コラムカテゴリ:法律関連

Q 私は,息子が事業を始めた際,頼まれて銀行からの借入金の保証人になりました。しかし,息子は,破産しましたので,私が,保証債務を履行せざるを得なくなりました。そこで,私は,とりあえず,その弁済資金を銀行から借りて,弁済し,その後で,不動産を売って銀行に返金しようと思っています。この場合は保証債務の履行のための不動産の譲渡ではないのですが,私に譲渡所得税はかかるのですか?

A いいえかかりません。
 所得税法64条2項は「保証債務を履行するため資産・・・の譲渡・・・があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使することができないこととなつた金額・・・を前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。」と規定していますが,ここでいう「同項の規定を適用する」という字句は,その金額は当該各種所得の金額の計算上なかつたものとみなすという意味ですので,あなたが,息子さんの債務を弁済しても,求償権の行使ができない場合は(破産はその場合にあたります。),その金額は,売買代金から控除されることになっていますので,その限度で譲渡所得税はかからないことは,過去のコラムで解説したとおろですが,
 所得税基本通達64-5は,「64-5 保証債務の履行を借入金で行い、その借入金(その借入金に係る利子を除く。)を返済するために資産の譲渡があった場合においても、当該資産の譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは、法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合」に該当するものとする。」と規定していますので,あなたが借入金で保証債務を履行した後にその借入金を銀行に返済するために資産を譲渡した場合も、譲渡所得税はかかりません。

 なお,重要なことですが,あなたは主債務者である息子さんに対し「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたとき」という要件を満たしたことを証明する責任があります。息子さんが破産をして,免責決定をもらえば・この要件は証明できますが,そうでない場合は,面倒でも,息子さんに対し,求償権の行使ができない理由を書いた上で,求償権を放棄するという内容証明郵便を出しておくことが必要です。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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