使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
Q 私はA市の人事担当の職員ですが,A市の職員で,うつ病に罹患し,長い間,職場に復帰できない職員がいますので,地方公務員法28条1項2号の「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」に該当すると考え,条例に基づき,免職処分にしたいと考えていますが,対象の職員から,現在の心身の故障は公務に起因するものだから免職処分にはできない,当該職員のうつ病が公務によらないというのならその立証責任はA市にあると言われました。
そうなのですか?
A
1 分限処分の根拠規定
地方公務員法28条1項は,降任、免職、休職等の,いわゆる分限処分をなしうる場合の一つとして,2号に「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」を挙げています。ですから,その理由による免職は可能です(ただし,その手続等については条例の定めがあることが要件になります。地方公務員法28条3項)。
参照
地方公務員法28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績が良くない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2 略
3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。
2 公務上の疾病の場合は解雇制限がある
ところで,労働基準法19条1項は,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇してはならない旨を規定しているのですが,地方公務員法58条3項は職員に対するこの規定の適用を除外していないので,この規定は地方公務員法上の職員についても適用があります。したがって,職員の疾病が公務上のものと認められるときは,療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇してはならないという制約を受けます。
3 公務上の疾病に出張立証責任
職員のうつ病が公務上のものであるという出張立証責任は,当該職員にあります(東京地方裁判所平成27年 2月18日分限免職処分取消等請求事件判決)。
ですから,当該職員に職員の精神疾患(神経症性抑うつ)に公務起因性が認められることに関する具体的事情につき,十分な主張立証の機会を与えてあげ,その立証ができていないと考える場合は,免職ができます。