(補説) 固定資産税等が高いと思ったときの争い方
Q 土地の売買契約を結ぶ際,売主Aから,瑕疵担保免責特約を入れて欲しいと要請された買主Bは,売主Aに対し,土中にコンクリートがら等の地中埋蔵物は無いだろうな,と質問しました。これに対しAは,“そのことは問題ない”と答えました。かくて売主Aの瑕疵担保責任免責約款付きの売買契約が結ばれたのですが,買主Bは,土地を取得した後,土中にコンクリートがら等の地中埋蔵物があることを知りました。
この場合,買主Bは売主Aに瑕疵担保責任を追及できるでしょうか?
A 民法572条は「売主は、・・・(瑕疵)担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実・・・については、その責任を免れることができない。」と規定しています。
この規定によれば,瑕疵のあることを知っていた売主は,瑕疵担保責任の免除を受けませんが,この件の売主Aは,瑕疵のあることを知っていたわけではありません。したがって,民法572条の要件に該当することをしたものではありません。
しかしながら,瑕疵があるか否かについての知識はなかったのに,質問に対し,あたかも調査をして地中埋蔵物のないことを確認したかのような“問題ない”という答えをしたのです。これでは,買主に対する裏切り行為です。
天網恢々疎にして漏らさず,ではありませんが,嘘をつくような不誠実な売主には,何らかの責任を負わすべきです。
東京地裁平成15.5.16判決は、コンクリートがら等の地中埋蔵物が存在する土地は、買主にその撤去工事や地盤改良工事を強いることになるので、「隠れた瑕疵」になるので,瑕疵担保免責特約を結んでいても、売主は,買主から地中埋蔵物の存在の可能性を質問された場合は,誠実にこれに関連する事実関係を説明すべき義務があると判示して,この質問に対して,調査もしていなかったのにもかかわらず,地中埋蔵物に関しては問題はないと回答したのは,重大な過失であるとし,民法572条の「瑕疵のあることを知っている」とは,「重大な過失で瑕疵のあることを知らなかった」場合も含むと解されると判示し,売主の瑕疵担保責任を認めました。
この売主が,買主より,土中にコンクリートがら等の地中埋蔵物が存在するだろうか?と質問されたとき,私は調査していないので知らない,と正直に言っておれば,瑕疵担保免責特約の適用を受けることができたでしょうに。この裁判例は,嘘をついて得することはないという教えでしょう。