コラム
(補説) 買主救済のための他の方法
2015年11月10日
(1)詐欺による取消し
瑕疵ある宅地を,瑕疵が無いものの如く装って,売りつければ,その行為は「詐偽」になり,買主は,宅地の売買契約を取り消すことができますが,その取消権は,「追認できる時から5年間,行為の時から20年」が経過すると,消滅してしまいます。
(2)錯誤無効の主張
「法律行為の要素に錯誤があったときは無効とする。」(民法95条)という規定により,売買契約の要素(重要な部分)に錯誤(勘違い)があれば,売主も買主も,権利行使期間の制限を受けることなく,売買契約は無効であるとの主張ができます。
ただ,この無効の主張も,平成28年成立予定の改正民法になると,錯誤による「無効」ではなく,錯誤を理由とした「取消し」に改正になりますので,「追認できる時から5年間,行為の時から20年」という権利行使期間の制約を受けることになります。
ここで,売買契約の要素に錯誤があったことを理由に売買契約を無効だとした裁判例を紹介しますと,大阪地裁昭和50年6月4日判決があります。
この事件は,建売住宅を建築する目的で,宅地を買ったものの,売買契約の2日後に、土地周辺が都市計画道路の区域指定の決定告示を受け、売買対象の宅地の大部分が道路予定地になっていた,というものです。この決定の告示は、売買契約締結の2日後になされたものですから,当然,行政庁の内部では、売買契約締結当時すでに既定のものとなっていたものと推認されるところです。つまりは,売主,買主とも,宅地として使えない土地になっていたことを知らないまま,その宅地に建物を建築できることを前提に売買契約を結んだということになるのです。これは売買契約の要素に錯誤があったことは明らかですので,判決は,都市計画道路の決定が最初から分かっていれば,買主は売買契約を締結しなかったであろうということができるので,売買契約はその要素に錯誤があったものであり、無効である,と判示しました。
関連するコラム
- (補説) 隣家の住人が難しい人や怖い人であれば,これも瑕疵 2015-11-05
- 8 手付の一部は手付の全部 2015-10-28
- 32 誤解するなかれ,建築条件付き特約を 2015-11-30
- (補説) 固定資産税等が高いと思ったときの争い方 2015-12-15
- 9 手付解除はいつまでならできる? 2015-10-29
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。