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14 分譲時,口に蜜あり,肚に剣ある例

2015年11月3日 公開 / 2015年11月26日更新

テーマ:不動産法(売買編まとめ)

コラムカテゴリ:法律関連

 兵は詭道なりは,孫子の言
 されど,法は正道にして,王道なり
 戦時の謀略を,平時の欺しと混同するなかれ,である。
 そんな商法には,気をつけるべし

⑴ 眺望を売りにした分譲マンションで、
札幌地裁平成16.3.31判決は、「札幌の風物詩を、特等席から眺める。」「豊平川の夜空に咲く花火。」と題して、また、花火の写真や大通公園の夜景を上から撮影した写真も掲載しての、利便性と眺望の良さを売りものにした、15階建てマンション甲の分譲広告をしたA社が、マンション甲の分譲後、その南25m道路を隔てた場所に高層マンション乙を建てたために(マンション甲とマンション乙の間の距離は約40m)、マンション甲を購入した区分所有者の眺望が大きく制限されることになったという事件で、マンション甲の購入者に、慰謝料として1人50万円~85万円を支払うよう、A社に命じました。




⑵ 遮音性・機密性を売りにした分譲マンションで,
福岡地裁平成3.12.26判決は,マンション分譲会社A社は、マンションをJRの鉄道近くに建て,分譲をする際,マンションの住戸は「遮音性、機密性に優れた高性能サッシを使用しています。」と広告したが,取引通念上高性能サッシとは遮音性は30dB(デシベル」以上になるとされているのに、実際に設置したサッシの遮音性能はJIS規格上遮音性としては最低ランクの25dBしかなく、このマンションの住戸の貨物列車通過時の室内騒音は50~60dBにも昇った(社会通念上、室内騒音の許容値は40dBとされている)ことから,A社の債務不履行(不完全履行)による損害賠償責任を認めたが,マンション住戸の財産価格の低下分についてその立証がないという理由で、1戸25~15万円の慰謝料を認めるにとどめました。

⑶ 「全戸南向き」を売りにした分譲マンションで、
京都地裁平成12.3.24判決は、「全戸南向き、採光の良い明るいリビングダイニング」の広告を見て、マンションを購入したものの、完成したマンションは、62度11分も西方向に向いていたという事件で、マンション分譲会社に対し、マンション購入者1戸あたりに対し120万円の慰謝料と15万円の弁護士費用の支払を命じました。なお、この判決は、マンションが南向きである場合の価格と、西方向に62度11分もふった場合の価格の差額を損害だとしたマンション購入者らの主張に対しては、買主は皆転売目的で住戸を買ったのではないこと、住戸の価格が南向きを前提にしたものかどうか不明であることを理由に、認めませんでした。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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