32 誤解するなかれ,建築条件付き特約を
建物を壊し,廃材をその土中に埋め,その上に真砂土をかぶせて整地をすれは,一見美しく整った宅地です。
その宅地は,いうまでもなく,土中に廃材があるという「隠れた瑕疵」のある宅地になりますが,その所有者が,その瑕疵ある宅地を買主に売ったとしますと,買主には売主に対し,①瑕疵担保責任,➁債務不履行責任及び③不法行為責任を問いうること,はいうまでもありません。
ところで,その宅地を,買主が,すぐには利用しなかったことにより,瑕疵の存在に気がつかず,いたずらに時間のみ経過したとしますと,
①の瑕疵担保請求権を行使しうる期間は,買主が瑕疵ある事実を知った時から1年(民法570条,566条)しかなく,買主がいつまでも瑕疵の存在を知らないでいたとしても,通常の債権の消滅時効期間が経過すると,瑕疵担保請求権は時効で消滅します(最高裁平成13年11月27日判決)ので,私人間の売買契約の場合で10年(平成28年改正予定の新民法施行後は5年),宅建業者から購入した場合で5年が経過すると,瑕疵担保責任の追及はできなくなります。
➁の債務不履行責任も,同じです。
ところが,③の不法行為責任は,知った時から3年,知らなかった場合は20年,追求することができるのです(民法724条)。
宅地を買って20年近く経って,家を建てることにして土を掘ったところ,廃材のあるのに気がついたという場合があれば,売主に不法行為の要件が整っている限り,不法行為責任が追及できるのです。
不法行為の要件とは,売主に「故意又は過失」があるときです。
故意とは,売主が瑕疵あることを知っていたであり,過失とは,知らなかったとしても知ることができたことをいいます。
瑕疵の存在を知ったのが,宅地を購入した後20年より後という場合,不法行為責任の追及はできません。
また,この期間が経過しておれば,瑕疵担保責任も,債務不履行責任も追及することはできません。
時効とは,時の経過の効果のことですが,言い得て妙というべきでしょう。