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13 不動産を買うときはこんなことにも気をつけるべし

2015年11月2日 公開 / 2015年11月20日更新

テーマ:不動産法(売買編まとめ)

コラムカテゴリ:法律関連

次は,不動産法実務でみられる紛争事例の一部です。
不動産を買い求めようとされている人には,参考になるものと思われます。

⑴中古マンションの雨漏りは瑕疵(東京地裁平成10.5.13判決)。

⑵地盤沈下も瑕疵(東京地裁平成13.9.26判決)

⑶地中埋蔵物
 もっともこれには,埋蔵されたコンクリートがらは瑕疵になるので,その撤去工事や地盤改良工事費用相当の損害賠償請求を認めるとの裁判例もあります(東京地裁平成15.5.16判決)が,地中に、直径30cm、長さ8mの地下杭(PHCパイル)が30本あっても、それらが地下室建築にあたって杭が障害となるような場合を除いて、「隠れた瑕疵」には当たらないとされた裁判例(東京地裁平成15.12.1判決)もあります。

⑷ 擁壁が設置されていないことも場合によっては瑕疵
 土地が宅地造成工事規制地域にあるため、施行令6条1項1号で定める擁壁を設置しなければならないのに、その崖面に擁壁がないことも瑕疵になります(東京地裁平成18.9.15)。

⑸ 下水管の勾配不足も瑕疵
 購入した土地建物の使用を開始した後、下水管が詰まり、排泄物等が滞留して臭気を発するという事態になった原因が,下水管の入り口と出口の間の勾配がわずか0.3/100しかなかった(日本建築設備協会の仕様書では最少1/100、その市の下水道条例では2/100と指定)ことで,これは瑕疵に該当します(東京地裁平成20.12.19判決)。

⑹ 改修マニュアルに違反した改修工事をしたマンション(住戸)も瑕疵
 東京地裁平成21.1.28判決は,マンションの区分所有者Aが,マンションの管理組合で決めた改修マニュアルに違反して,床用下地材は乾式二重床システム(防振ゴム付き脚)を使用する、床仕上材には防振シートや鉛複合板等を敷く、冷温水菅の保温材の厚さは40ミリ以上にするなどの工事をしなかったことは瑕疵になり,また,改修マニュアルに違反した改修工事をしたことを買主に告げなかったことは不法行為になるとして,Aに対し,買主Bのした改修工事のやり直し工事にかかる費用と工事期間中の賃料相当損害金、さらに弁護士費用(損害賠償額の10%相当)の損害賠償を命じました。

⑺ 宅建業者が環境の変化(悪化)についての調査不足を露呈したケース
 千葉地裁平成14.1.10判決は,小児喘息の子のため環境のよい土地を物色していた買主が,仲介業者から勧められた土地は環境がよく,また,仲介業者からは,近く公園ができると聞いので,土地を購入し家を建てたが,その後できたのは調整池兼用の公園で、家の前4m離れて、高さ5m、長さ103mの巨大な鉄筋コンクリート製の擁壁ができたため,日照は確保できるものの眺望その他の環境の良さを失ったという事件で,仲介業者に調査不十分の過失責任を認め,建物改装費用の一部300万円の支払を命じました。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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