民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲
⑴ 相続時精算課税制度というのは、この制度を選択した場合は,親から子へ生前贈与をしても,一定の金額の範囲内のものなら贈与税はかからず、それを超えると超えた金額に20%の贈与税がかかるが,そのいずれの場合であっても,親が死亡して相続が開始した時に,その財産が存在したものとして,相続税の対象になり,過去に支払った相続時精算課税制度で納めた贈与税は還付されて清算されるという制度です。
(2) この制度を利用するためには、受贈者が贈与税の申告時に選択届出書等を提出することが必要ですが、いったんこの届出をすると撤回が出来ません。
(3) 相続時精算課税制度を利用すると、受贈者ごとに2500万円の特別控除額(財産によっては加算されます。)が認められますので、この範囲内の贈与であれば贈与税はかかりません。贈与税がかからない金額を引いた残りの贈与分の贈与税率は、一律20%です。
(4) この制度を選択すれば、このときの贈与を含めそれ以後の子への贈与にかかる財産については,暦年贈与制度は利用できず,生前贈与をしたものは,すべて贈与時の価格で相続税の対象となる遺産に含められます。したがって、この制度を選択すると、生前贈与をすることにより相続時に課税対象となる遺産を減らして相続税を節税するというプランは立てられないことになります。
(5) さらに、贈与された不動産については相続税の場合に認められる小規模宅地の評価減の適用は受けられず、贈与された財産については物納も認められないのです。さらに贈与された財産が未上場株式の場合評価減も認められません。
(6) 不動産の贈与を受けた場合の登録免許税が、相続なら0.4%なのに贈与では2%となり、不動産取得税が、相続ならかからないのに贈与では3%かかるなどの問題もあります。
(7) しかし、贈与財産が相続時までに値上がりしている場合は、相続税の課税価格は贈与時の価格で計算されますので、得になります。逆に値下がりしているときは損になります。
⑻ 結論としては,相続時精算課税制度では、贈与した財産の価格が贈与時の価格で相続税の課税価格に算入されますので、値上がり確実な未上場株式や土地などを生前贈与する場合などは有利な制度と言えますが、一般には、親が資産家で相続人に高額の相続税がかかる場合は、相続時精算課税制度を利用しないで、毎年110万円の贈与税の基礎控除額や低率の贈与税率の範囲での贈与を継続した方が有利となる場合が多いでしょう。逆に、相続税があまりかからない場合は、相続時精算課税制度を選択すれば、相続発生前に、贈与税をあまり気にしないで、親から子に財産の移転が可能になりますので、子が財産を必要としている場合には有効だと思います。