マンション㉑ 規約変更の有効,無効
管理費用などの債権は,訴訟を起こさなくとも,債務者である区分所有者の,区分所有権などにつき,競売の申立てができ,しかも,他の債権者に優先して,弁済を受けることができます。
もっとも,専有部分に,抵当権の設定など,登記された第三者の権利がある場合は,それには優先しません,
すなわち,区分所有法第7条は
(先取特権)
1項で,「区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。」という規定を置き,
2項で,「前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。」という規定を置き,
3項で,「民法第319条 の規定は、第1項の先取特権に準用する。」という規定を置いているからです。
ただ,この先取特権は,一般の先取特権の一種である共益費用の先取特権とみなされ(3項の趣旨),また,民法336条は「一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。」と規定していますので,専有部分に抵当権の設定登記手続がなされている場合は,抵当権が優先します。
詳しく解説をすると,以下のとおりです。
1 被担保債権の範囲 (競売で回収できる債権の範囲)
⑴ 区分所有者相互間の債権
① 「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき」有する債権
例えば,
a 区分所有者甲が,区分所有者乙が負担する管理費,公租公課,敷地の地代その他の負担金を立て替えて支払っていた場合の,立替金償還請求権
b 区分所有法11条2項により共用部分を管理所有する区分所有者が,同法20条1項の規定により,各区分所有者に対して有する管理費用請求権
➁ 「規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」
例:
a 管理費,組合運営費,修繕積立金等の経常的支払債務
b 臨時修繕負担金等集会決議の寄り臨時の負担金
c 一定の義務違反行為につき,規約で違約金の支払義務を定めている場合の違約金請求権
⑵ 「管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権」
これは,管理組合が法人である場合は,⑴に記載した債権のうち①のa以外の債権はすべて,ここでいう債権になります。
⑶ 「管理者がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権」
ここでは,法26条4項で,管理者が,区分所有者のために訴訟当事者になった場合の弁護士費用の前払又は償還請求権などが考えられます。
2 先取特権の客体
これは,「債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産」です。
参照:
(共用部分の共有関係)
法第11条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法第177条 の規定は、共用部分には適用しない。