債権法改正 大改正。債権の原則的な消滅時効期間は5年になる。短期はなし
【コメント】
現在,国会で審議中の債権法(民法のうち債権に関する法規)の改正案は,債権譲渡に関して多くの新設規定を置くことにした。ここの紹介するものは,みな,条文の番号に枝番がついていることかわ分かるように,新設規定である。
( 譲渡制限の意思表示が付された債権の債務者の供託)
民法466条の2 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。イにおいて同じ。)の供託所に供託することができる。
2 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
3 第1項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。
民法466条の3 前条際1項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては、同条第2項及び第3項の規定を準用する。
【コメント】
改正法は,譲渡人、譲受人のいずれに支払ったらよいのか迷うであろう債務者のために、供託の道を開いた規定を新設した。
(譲渡制限の意思表示が付された債権の差押え)
民法466条の4 第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
2 前項の規定にかかわらず、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった第三者の債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。
【コメント】
例えば、甲が債権者、乙が債務者、甲と乙との間に債権譲渡禁止の特約が結ばれている場合で、かつ、甲の債権者丙が、そのことを知っているか重大な過失で知らなかった場合、甲から丙への債権譲渡は無効になるが、丙が甲の乙に対する差押えは有効になる(1項)。しかしながら、丙の債権者丁が債権者代位権を行使して甲の乙に対する債権を差し押さえるのは無効になる(2項)ということである。
(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)
民法466条の5 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
【コメント】
預貯金については、取引約款で譲渡禁止特約が付されていること、円滑な預貯金の払戻事務に資することになることで、譲受人の主観にかかわらず、譲渡禁止特約を有効としたものである(1項)。また、そのような預貯金であっても、差押えは有効になることを明らかにしたものである(2項)。