改正法の下では、特別損害の範囲が変わる 主観から客観へ
本コラムは,本年2月に公表された債権法改正要綱案を前提にしています。
要綱案は,その後,本年3月31日に債権法改正案になって国会に上程され,現在審議中です。
要綱案と改正案では,実質的な違いはありませんが,部分的には,用語や表現が違うところがあります。
いずれ,本コラムは,法律改正がなされた後で,正しい条文を紹介した上で,補足させていただく予定です。
それまでの間,要綱案の説明で,ご容赦ください。
7 代理権授与の表示による表見代理
民法第109条
(1) 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。(民法第109条と同文)
(2) 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば(1)によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、当該行為について、その責任を負う。
8 代理権消滅後の表見代理
民法第112条
(1) 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
(2) 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば(1)によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、当該行為について、その責任を負う。
コメント
現行法では,表見代理に関する規定は,民法109条の代理権授与による表見代理,民法110条の権限外行為の表見代理及び民法112条の代理権消滅後の表見代理の3つに別れているが,これらが重なった場合はどうなるか?については規定がない。例えば,109条の代理権授与による表見代理が成立する場合でも,その授与したとされる代理権を超える代理行為がなされた場合にも,表見代理が成立するのかといういわゆる「重畳適用」の問題である。改正法は,それらについても表見代理が成立するとの判例法を踏襲し,明文化したもの。