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相続 相続分の指定によって遺留分が侵害された場合の最高裁判例

菊池捷男

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テーマ:相続(遺留分篇)

 最高裁判所平成24年1月26日決定は,次の1記載の相続分の指定遺言で,遺留分が侵害されたABC3名が,遺留分の減殺請求をした結果は,各相続人の指定相続分が2に記載した内容に修正されると判示しました。その理由は3に記載したとおりです。
1,相続分の指定
 遺言者(被相続人)は,次のAからFまでの6人の相続人の相続分を次のように指定しました。
ABCの3名の遺留分 割合は,法定相続分の1/2ですので,この遺言書により,ABCとも1/20の遺留分が侵害されたことになります。
A(先妻との子)・・・・・指定相続分 0  (法定相続分1/10)
 B(先妻との子)・・・・・指定相続分 0  (法定相続分1/10)
 C(先妻との子)・・・・・指定相続分 0  (法定相続分1/10)
D(後妻)・・・・・・・・・・指定相続分 1/2 (法定相続分1/2)
 E(後妻との子)・・・・・指定相続分 1/4 (法定相続分1/10)
 F(後妻との子)・・・・・指定相続分 1/4 (法定相続分1/10)
2.遺留分減殺請求結果の指定相続分
 そこで,ABCはDEFに対し遺留分減殺請求をしました。これにより,ABCの3名が,遺留分1/20を回復しましたが,他の相続人の指定相続分は,次のように修正されました。
 これにより,これを,1の相続人6名についていえば,
 A(先妻との子)・・・・・減殺の結果回復した相続分 1/20 (遺留分 割合1/20)・・・遺留分を確保
 B(先妻との子)・・・・・同相続分 1/20 (遺留分 割合1/20)・・・同上
 C(先妻との子)・・・・・同相続分 1/20 (遺留分 割合1/20)・・・同上
D(後妻)・・・・・・・・・・修正された相続分 23/52 (遺留分 割合1/4)・・・遺留分を超える指定相続分の割合で修正
 E(後妻との子)・・・・・同相続分 53/260 (遺留分 割合1/20)・・同上
 F(後妻との子)・・・・・同相続分 53/260 (遺留分 割合1/20)・・同上
3,計算方法
計算方法は次のとおりです。
① 遺留分権利者AB及びCの各遺留分割合は1/20,合計は3/20
② Dの遺留分超過分=指定相続分1/2-遺留分割合1/4=5/20
③ Eの遺留分超過分=指定相続分1/4-遺留分割合1/20=4/20
④ Fの遺留分超過分=指定相続分1/4-遺留分割合1/20=4/20
⑤ DEFの遺留分超過分の割合=5:4:4
⑥ ABCの遺留分割合合計3/20を⑤の割合で割り付けると,
 Dは,3/20×5(5+4+4)=15/260
Eは,3/20×4(5+4+4)=12/260
Fも,3/20×4(5+4+4)=12/260
⑦ ⑥で割り付けた分をDEFの各指定相続分から控除する。
  Dは,1/2-15/260=115/260=23/52
  Eは,1/4-12/260=53/260
  Fも,1/4-12/260=53/260

4,最高裁判所平成24年1月26日決定の理由
同決定は,
①相続分の指定によって,遺留分が侵害された場合は,遺留分減殺請求により,相続分の指定が減殺されることになる。
②遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される(最高裁平成10年2月26日判決参照)。
と判示したのです。
 なお,この最高裁決定が引用した,最高裁判所平成10年2月26日判決というのは,「相続人に対する遺贈が遺留分減殺の対象となる場合においては,右遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが、民法1034条にいう目的の価額に当たるものというべきである。けだし、右の場合には受遺者も違留分を有するものであるところ、遺贈の全額が減殺の対象となるものとすると減殺を受けた受遺者の遺留分が侵害されることが起こり得るが、このような結果は遺留分制度の趣旨に反すると考えられるからである。そして、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言による当該遺産の相続が遺留分減殺の対象となる場合においても、以上と同様に解すべきである。」という判例のことです。

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