コラム
価額弁償は減殺請求を受けた受贈者・受遺者の権利なるも義務にあらず
2018年8月10日
1 遺留分減殺請求は財産ごとに共有状態をつくる権利
遺留分減殺請求をすると、対象になった財産ごとに共有になります。
例えば、甲から乙に対し、遺留分減殺請求をした場合で、遺留分減殺割合が1/4、対象になった財産が、土地、有価証券、預金2口だとしますと、遺留分減殺請求の結果は、土地は甲が1/4、乙が3/4、有価証券も甲が1/4で乙が3/4、預金2口も、それぞれ甲が1/4、乙が3/4の共有状態になります。
これでは、たいへん不便です。
そこで、次の制度が用意されています。
2 価額賠償制度
民法1041条は「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。」と規定していますので、遺留分減殺請求を受けた側は、現金の支払い(価額弁償)ですませたいと思う財産については、金銭の支払いをすれば、財産(共有持分)を遺留分権利者に与える必要はありません(最高裁第三小法廷平成12年7月11日判決)。
3 遺留分権利者には価額弁償請求権はない
この価額弁償制度は、遺留分権利者のための制度ではないため、遺留分権利者からは、価額弁償を請求することはできません(名古屋高裁平成6.1.27判決、東京高裁昭和60.9.26判決)。
この点、遺留分権利者からも価額弁償請求ができるとの誤解が多くあります。
4 遺留分権利者から、特定の財産に絞った遺留分減殺請求も認められていません。
関連するコラム
- 遺産分割における付随問題①使途不明金 2016-04-14
- 相続 相続分の指定によって遺留分が侵害された場合の最高裁判例(続) 2015-03-27
- 遺留分減殺請求権が,消滅時効にかかっていなかったケース 2016-11-10
- 遺産の評価問題 2016-04-21
- 相続 相続分の指定によって遺留分が侵害された場合の最高裁判例 2015-03-24
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。