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労働 付加金の支払義務発生要件

2015年2月26日

テーマ:労働

コラムカテゴリ:法律関連

Q 当社は,今般,従業員である甲から,労働基準法34条に基づく時間外手当の請求と同法114条に基づく付加金の請求訴訟を起こされたので,敗訴の可能性が高いことを思い,甲が請求した時間外手当の全額と遅延損害金の全額を支払いました。しかし,甲は,付加金の支払いがないという理由で,訴えを取り下げてくれません。当社は,付加金も支払う義務があるのですか?

A 付加金の支払義務はありません。
最高裁判所平成26年3月6日判決は,「労働基準法114条の付加金の支払義務は、使用者が未払割増賃金等を支払わない場合に当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所が付加金の支払を命ずることによって初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に同法37条の違反があっても、裁判所がその支払を命ずるまでに,労働者に未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅しておれば,もはや、裁判所は、労働者に対し、上記未払割増賃金に係る付加金の支払を命ずることができないというべきである」と判示していますので,貴社には,もはや付加金支払義務が発生することはありません。
貴社は,裁判所に対し,未払割増賃金の全額を支払ったことを主張立証すれば,裁判所は,甲に対し訴えの取り上げを勧告してくれますが,甲がそれに従わないときは,甲の請求を棄却する判決を言い渡すでしょう。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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