使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
1,判例
最高裁判所平成14年2月28日判決は,
①仮眠時間が労基法上の労働時間に当たる場合がある。
➁その場合で,仮眠時間に対する賃金の支給規定を置いていないで,別途,泊り勤務手当を支給する旨規定している場合は,仮眠時間に対しては泊り勤務手当以外には賃金を支給しないものとされていたと解釈するのが相当である。
と判示しているところですが,その泊まり勤務手当と最低賃金との関係には言及していません。
2,学説
学説(菅野和夫著「労働法第十版」314頁)は,「最低賃金は,通常の労働時間又は労働日の労働に対して支払われる賃金である。・・・使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間若しくは所定労働日に労働をさせなかった場合には,労働しなかった日又は時間について賃金を支払わないことは最低賃金の規制に何ら反するものではない(最低賃金法4条4項)。例えば,一昼夜交代でビルの保守管理業務に従事するビル管理人が・・・もしも休憩時間の一種であれば,これに対する手当は,最低賃金の規制の対象外である。しかし,警報が鳴った場合に必要な対応をしなければならない手待ち時間として労働時間にあたるとされる場合には,使用者は,この時間について通常の勤務時間の賃率より低い特別の賃率を設定することは許されるが(前記判例を引用)仮眠時間も所定労働時間の一種であることになるから,その時間帯に対する賃率は最低賃金額以上のものとしなければならなくなる。しかし,当該一昼夜交代勤務が,仮眠時間の方が実勤務時間よりも長いものであれば,昼夜交代勤務の全体につき「軽易な業務に従事する場合」(最低賃金法7条4号)として減額の特例の許可を受けうる可能性があると考えられる。」と説いているところです。
参照:最低賃金法
(最低賃金の効力)
第4条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
4 第1項・・・の規定は、労働者がその都合により所定労働時間若しくは定労働日の労働をしなかつた場合又は使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間又は日に対応する限度で賃金を支払わないことを妨げるものではない。
(最低賃金の減額の特例)
第7条 使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する。
4号 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
なお,最低賃金法第7条第4号の厚生労働省令で定める者とは、同法施行規則第3条2項で「軽易な業務に従事する者及び断続的労働に従事する者とする。ただし、軽易な業務に従事する者についての同条の許可は、当該労働者の従事する業務が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者の従事する業務と比較して特に軽易な場合に限り、行うことができるものとする。」と規定されています。
なお,「減額措置及び適用除外について」 - 厚生労働省によれば,「断続的労働に従事する者」の許可基準として,「当該労働者の実作業時間数が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者の実作業時間数の二分の一程度以上であるときは許可しない」とされています。