コラム
ただでもらった魚は毒が回ったふぐかもしれない
2014年11月15日
毒が回ったふぐなど,貰わない方がよい。
相続分の譲渡(贈与)を受けるときは,毒が回っていないかどうかを,よく調べることだ。毒とは,ここではマイナス資産の意味だ。ただほど高いものはないという言葉もある。相続分の譲渡には気をつけるべし。
ある兄弟の話だ。
父が亡くなり,子である甲乙丙3人が相続人になった。遺言はない。したがって,法定相続分は,甲乙丙それぞれ3分の1ずつだ。しかし,このうち甲は,父の生前,父より本来の相続分を超える生前贈与を受けていた。だから,甲は,「俺は,親父の遺産からは,な~んにもいらね~」と言ったものだ。それを聞いた乙が,甲に対し,「お前のう。お前にも法定相続分ちゅうもんが1/3あるんじゃが,それを俺にくれねえか。そうすりゃあ,俺の法定相続分とお前の法定相続分を合わせて,おれの法定相続分は2/3に増えるんじゃがのう。俺も1/3に1/3を足すと2/3になるというくらいの計算はできるんじゃ。」と言ったもんだ。そこで,甲は,仲の良い乙からの頼みでもあり,丙とは不仲であったことから,乙の頼みを聞き容れ,乙に対し相続分の譲渡をしてしまったのだ。
その後で,乙と丙との間での遺産分割の調停が始まった。
法定相続分1/3に法定相続分1/3を足すと法定相続分が2/3になるという計算はできたが,遺産分割は,生前贈与や寄与分があれば,法定的相続分が修正され,具体的相続分が算出されて,それを基準にされるということを知らなかった乙は,甲の相続分の譲渡によって,甲のマイナス資産になっていた具体的相続分を引き継いだため,ああ,無残や,遺産分割でもらえる財産が,丙のもらえる財産の数分の1にしかならない結果になってしまった。ふぐの毒が当たったということだ。
投資話などで,美味しそうな話を聞くのもいいが,甘い話にゃ毒がある。
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