公用文用語 もと(「下」と「元」と「基」)の使い分け
文を,あるいは,文章を,漢字で書くか,平仮名で書くかの,判断は,帰するところ,漢字本来の意味を持った用い方になっているかどうかの判断になります。
漢字は歌舞伎俳優,平仮名は黒子と理解し,歌舞伎俳優に,その役ではないところで,舞台衣装を纏わせることほど,歌舞伎俳優に対し,礼を失するものはないでしょう。
漢字で書くか,平仮名で書くかの判断に迷うとき,漢字は歌舞伎俳優,平仮名は黒子と理解すれば,後は知るべし,思うべし。自ずと,道(書き方方向性)は開けることと思います。
「公用文における漢字使用等について」別表1(2)キでは,「仮名で書く語句」とされているものには,次の語があります。括弧内が,その用例になります。
なお,矢印(→)の右に書いたものは,「公用文における漢字使用等について」に記載されたものではなく,私が僭越ながら書き加えたものです。
十分に見ていただくと,これらの漢字は,平仮名で書くにふさわしいことが感じられると思います。
例 ある(その点に問題がある。)→「在る」とは書かない
いる(ここに関係者がいる。)→「居る」とは書かない
こと(許可しないことがある。)→「事」とは書かない
できる(だれでも利用ができる。)→「出来る」とは書かない
とき(事故のときは連絡する。)→「時」とは書かない(注記:時点を表す場合は「時」と書く)
ところ(現在のところ差し支えない。)→「所」や「処」とは書かない
とも(説明するとともに意見を聞く。)→「と共に」とは書かない
ない(欠点がない。)→「無い」とは書かない
なる(合計すると1万円になる。)→「成る」とは書かない
ほか(そのほか・・・,特別の場合を除くほか)→「他」や「外」とは書かない・・・
注記:「ほか」を「外」と書くことができる特別の場合というのは,「何々外3名」という場合です。
もの(正しいものと認める。)→「物」とは書かない
ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。)→「故」とは書かない
・・・かもしれない(間違いかもしれない。)→「かも知れない」とは書かない
・・・てあげる(図書を貸してあげる。)→「上げる」は書かない
・・・ていく(負担が増えていく。)→「行く」とは書かない
・・・ていただく(報告していただく。)→「頂く」とは書かない
・・・ておく(通知しておく。)→「置く」や「措く」とは書かない
・・・てください(問題点を話してください。)→「下さい」とは書かない
・・・てくる(寒くなってくる。)→「来る」とは書かない
・・・てしまう(書いてしまう。)→「了う」や「仕舞う」と書かない
・・・てみる(見てみる。)→「見て見る」とは書かない
・・・てよい(連絡してよい。)→「連絡して良い」とは書かない
・・・にすぎない(調査だけにすぎない。)→「過ぎない」とは書かない
・・・について(これについて考慮する。)→「付いて」とは書かない