公用文の書き方 5 “動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書く”と覚えるべし
1 「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の4語
「公用文における漢字使用等について」1(2)オには,前述のように,例をあげて,接続詞は平仮名で書くことと定めています。しかしながら,「ただし,次の4語は,原則として,漢字で書く。及び 並びに 又は 若しくは」との「ただし書」を設けております。
したがって,「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の4語句は,漢字で書かなければなりません。
何故,これらの語句が漢字で書かれるのか?を,漢字の意味から探るのは,愚かです。これらの接続詞が,漢字で書くこととされたのは,その重要性ゆえの約束事があるからです。
では,どのような重要性があり,約束事があるのかといいますと,次のとおりです。
まず,平仮名で書くこととされている他の接続詞は,文と文,文節と文節を接続するもので,その接続詞の後には,必ず読点(,)を打つのに対し,
「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の4語句は,
①名詞(動詞や形容詞など用言の名詞形を含む。本コラムでは以下同じ。)と名詞を結びつけるものであること,
➁その後に読点は付けないこと,
③「及び」と「並びに」は,名詞と名詞を併合的に結びつけ,「又は」「若しくは」は,名詞と名詞を選択的に結合すること,
④結びつけることに段階を設ける場合で,一番小さい段階の名詞と名詞を結合するときは,
a 併合的な結合では「及び」を,
b 選択的な併合では「若しくは」を用い,・・・「又は」ではないので注意!
⑤結びつけることに段階を設ける場合で,一番小さい段階以外の段階の名詞と名詞を結合するときは,
a 併合的な結合では「並びに」を,・・・「及び」ではないので注意!
b 選択的な結合では「又は」を用いること,
⑥結びつけることに段階を設けない場合は,
a 併合的な結合は「及び」のみを用い,「並びに」は用いないこと(「及び」のないところで「並びに」は用いない),
b 選択的な結合では「又は」を用い,「若しくは」は用いないこと(「又は」のないところでは「若しくは」は用いない),
という約束事です。
このような重要な役目のために,これらの接続詞は,漢字で書くこととされたのです。
本来黒子役の接続詞ですが,これらの語は,その重要性ゆえに,個性の光る歌舞伎役者とされたのです。