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公用文の書き方 13 「但し」を「ただし」に,「但し書き」を「ただし書」にする理由

菊池捷男

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テーマ:公用文用語

 「ただし書」の「ただし」は,前の文に書かれた内容を補足する接続詞です。ですから,「ただし書」の後の文は,前の文との一体性を失わせないようにするため,前の文の直後に「ただし,」と書き始めることになっているのです。多くの接続詞が,前の文の後,改行して,段を一つ落として,書き始めることができるのと違っているのです。

 「但」という漢字から,以上の「ただし書」の役割や意味を汲み取ることはできません。
 もともと,「但」という漢字には,音字は与えられていないのです(常用漢字表では,音字はなく,訓字があるだけです。)。漢字に音字がないということは,熟語がないということです。熟語は,ほとんどの場合,音字で読まれるからです。音字が与えられていない漢字,すなわち熟語のない漢字は,意味が定められていない漢字というほかありません。
 意味の定めのない漢字は,使い道がありません。
 「但」は,「但馬」など一部の固有名詞の中で使われるだけになっているのです。
 ですから,「公用文における漢字使用等について」が,「但し」を「ただし」とするよう定めているのは,けだし当然というべきです。

 「公用文における漢字使用等について」が,慣用的に漢字で書かれている,他の接続詞も,平仮名書きにするように定めている理由は,漢字を当てる理由がないこと,漢字の持つ機能や効用を阻害してしまうことにあるからだということ,昨日のコラムで解説したところです。

 歌舞伎の世界で,黒子がすべき場面に,役者を使ってはならない,ということでしょう。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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