公用文の書き方 14 漢字で書く接続詞 「及び」「並びに」「又は」「若しくは」
「法令における漢字使用等について」にも,次のような語を,平仮名で書くように定めています。
公用文を書く場合は,これにも従わなければなりません。
一般の人も,これらに従うべきでしょう。そのほうが,より正しく漢字を選択することができるようになると思われるからです。
虞・恐れ →おそれ
且つ→かつ
従つて(接続詞)→したがつて
外・他 →ほか
又 →また
因る→よる
拘わらず →かかわらず
此 →この
之 →これ
其 →その
煙草 →たばこ
為 →ため
以て →もって
等(ら) →ら
猥褻 →わいせつ
これらの言葉(語)を平仮名で書かなけばならないとした理由は,漢字使用の理由がない。すなわち,漢字が最も効果を現す場面でないから,というほかありません。
虞
恐れ →おそれ
の意味は,「虞」の意味で「恐れ」と書くには間違いなので,その場合は「おそれ」と平仮名で書くことを示しているのです。
漢字の「恐れ」は,恐怖の「恐れ」で,懸念や心配の意味の「虞」ではないからです。
本来,懸念や心配の意味で「おそれ」と書く場合は「虞」という漢字を使うところですが,常用漢字表には「虞」は掲げられていません。そのため,懸念や心配の意味で「おそれ」と書く場合は,平仮名で書くように定めたのです。
したがって,恐怖の意味で「恐れ」と書くことは,問題ありません。
「且つ」には,常用漢字表で,読みも用例もありますが,それ以外の用例はなく,「且」という漢字自体に明確な意味はないというほかありません。副詞であっても,平仮名がふさわしいものと思われます。
「従つて」は,動詞「従う」の活用形ですから,意味は明瞭です。「従う」という漢字に,直接文章や文節を接続させるという意味はないでしょう。
「外」は,内の対局にある外ですが,「ほか」という意味はないものと思われます。
「又」の意味は,二つに分かれて開いている状態(例:木の又・道の又)のことですが,これに付け加える意味の「また」の意味はないか,あっても薄いものと思われます。
「因る」は,原因の因という字ですので,「それを原因に」という意味の「よる」に当てても不当とまではいえないかもしれませんが,その意味の「よる」も,漢字で書かねばならないほどの重要な場面とは思えず,平仮名がふさわしいと思います。
「以て」,「此」,「之」,「其」,「その為」及び「等(ら)」といい語も,漢字本来の意味からは遠く離れた使い方をしており,漢字で書くことに違和感を持たせます。これらも平仮名で書くのにふさわしいものと思われます。
常用漢字表で,「等」に与えられた音字と訓字は「トウ」と「ひとしい」だけです。「など」と読むこともできません。
「等」を「ら」や「など」と読みたいときは,平仮名で書かねばなりません。