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公用文の書き方 8 平仮名で書く形式名詞と補助形容詞の例

菊池捷男

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テーマ:法令用語

形容詞と補助形容詞でいいますと,
例えば,「欲しい」と「てほしい」
「欲しい」という用語は,「自分のものにしたい,手に入れたい,望ましい」という意味の形容詞です。形容詞は,前述のとおり,漢字で書きます。
「お菓子が欲しい。返事が欲しい。落ち着きが欲しい。」などです。
一方,平仮名の「てほしい」は,動詞の連用形に接続助詞の「て」を付けて「・・・してもらいたい」という意味になる補助形容詞ですので,平仮名で書かねばなりません。
「もっと頑張ってほしい。貸したお金を返してほしい。」などです。
ですから,× 「もっと頑張って欲しい」は間違った書き方になります。

名詞と形式名詞の関係も,同じく名詞は漢字,形式名詞は平仮名で書くことになります。
「事」か「こと」か?
「事」も名詞(実質名詞)として使われる場合は,漢字で書かねばなりません。「去年の事。事彼に関する限り,良い事があった。本当の事。考え事。」などです。
しかしながら,形式名詞の場合や副詞的な使われ方をする場合は,平仮名で「こと」と書かねばなりません。「私こと。話し合いたいことがある。あんなことがあった。彼のことだ。書くこと。早く起きること。」などです。

×「書く事は大切だ」は間違った書き方になります。

その他,名詞については,実質名詞としての性格を失って平仮名で書かれる言葉には,次のような字句があります。

「位」か「くらい・ぐらい」か?
「位」は,身分・地位・称号を意味する名詞ですので,名詞として使う場合は漢字で書くことになります。「位の高い人。位人臣を極める。位負けをする。」などです。
 しかしながら,程度や限度を示す副助詞又は助動詞として使う場合は,「くらい」又は「ぐらい」と平仮名で書かねばなりません。「私くらいの年格好の人。あのくらいの大きさ。」などです。
なお,「公用文における漢字使用について」別表1(2)カに,助動詞及び助詞は,平仮名で書くものとされ,その中に「ぐらい(二十歳ぐらいの人)」が掲げられています。

×「二十歳位の男性」も間違った書き方になります。

「程」と「のほど」
「程」は,物事・動作・状態の程度や段階のことで,名詞として使う場合は,漢字で書きます。「実力の程。真偽の程は知らない。ふざけるにも程がある。程なく帰ってくる。」などです。
しかしながら,断定を避け,表現を軟らかくするのに用いる形式名詞として使う場合は,「ほど」と平仮名で書きます。「御自愛のほどを祈ります。詳細のほどは後日お知らせします。」などです。

× 「詳細の程は後日お知らせします。」も間違った書き方になります。

「訳」か「わけ」か?
「訳」は,理由のことです。これも,実質名詞の場合は漢字で書きます。「訳が分からん。成績が良い訳を教えよう。」などです。
しかしながら,形式名詞の場合は,平仮名で書かねばありません。
 「公用文における漢字使用等について」別表1(2)キに,
「次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。」と書かれ,その一つとして,
「わけ(賛成するわけにはいかない。)」が記載されていますが,この「わけ」という単語は,名詞ではありますが,「訳」の持つ「理由」という意味が薄れ,形式名詞になっていますので,平仮名で書くことになるのです。
他にも,「そんなわけにはいかないよ。そういうわけではない。そう言ったわけではない。」などがあります。

×「賛成する訳にはいかない。」も間違った書き方になります。


「通り」か「とおり」か?
「通り」は,道路の意味の漢字ですので,道路や街路の意味で使う場合は,漢字で書かねばなりません。「あっちの通り。反対側の通り。彼が店を出している本町通り」などです。
しかし,その意味のない使い方をする場合は「とおり」や「どおり」と平仮名で書かなければなりません。
「公用文における漢字使用等について」別表1(2)キに,「仮名で書く語句」の一つとして,「とおり (次のとおりである。)」が示されています。

×「次の通りである。」も間違った書き方になります。


なお,名詞は,原則として漢字で書きますが,「公用文における漢字使用等について」別表1(2)アは,代名詞について,次のように定めています。
「ア 次のような代名詞は,原則として,漢字で書く。
       例  俺  彼  誰  何  僕  私  我々  」

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