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契約書 期限の利益喪失約款をつけ忘れた場合

2014年8月26日

テーマ:民法雑学

コラムカテゴリ:法律関連


 私Aは借家を所有している者です。本年6月末日に,借家人Bが家賃50万円を未納にして退去しました。このときBは,50万円の未納家賃を,本年7月から11月まで毎月末日限り10万円ずつ分割して支払うと言いましたので,その旨の契約書を取り交わしました。
すなわち,
         分割弁済契約書
第1条 BはAに対し,未払家賃債務50万円のあることを認め,これを分割して,平成26年8月から同年11月までの間,毎月末日限り,10万円あてを支払う。
第2条 Aは,Bに対するその余の請求を放棄する。
第3条 AとB間においては,本契約書に定めるほか,互いに何らの債権債務のないことを確認する。
る。

という契約です。 
 その後,Bは,第1回目の分割払いの日である本年7月末日に10万円を支払ませんでした。
 そこで,私はAに対し,50万円を全額一度に支払ってもらいたいのですが,そのような請求はできますか?


1,期限の利益喪失約款がある場合ならできますが,それがない場合は,すぐに50万円全額を一度に支払えという請求はできません。

すなわち,前記契約書の第2条あたりに,「Bが前条の分割債務の支払を1回でも怠ったときは,期限の利益を喪失し,残額一度に支払う。」という文言(期限の利益喪失約款)を書き入れていたら,Bが7月に10万円を支払わなかったという事実があるだけで,Aは,50万円全額の請求ができます。

2,期限の利益の喪失約款がない場合
期限の利益喪失約款を入れていない場合は,Aが7月末日に10万円を支払わなかった事実があるだけでは,50万円を請求することはできません。7月末に支払うべきであった10万円の請求ができるだけです。
しかしながら,①AがBに対し,10万円の支払を一定期間内に履行するように催告する。そして,➁Bがその一定期間内に10万円を支払わなかったときは,Aは,Bに対し,前記分割弁済契約を解除できますので,そのときは,50万円を全額一度に請求することができます。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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