契約書知識 15 契約書の記載事項(2)
Q 契約書を作成し,契約当事者が署名押印した後で,「債権者」と書くべきところを「債務者」と誤記しているところが1か所あることが分かりました。そこで,訂正したいと思いますが,その方法として,「債権者」という文字を二重線で消し,その上に,契約当事者双方が判を押し,その横に「債務者」という文字を書き加える方法によりたいと思いますが,それが正しいやり方でしょうか?
A その方法では十分とはいえません。その方法に加えて,その行の左欄外(契約書が縦書きの場合はその行の上欄外)に「3字削除,3字加入」と書き,その横に当事者双方の判を押すべきです。
文字の訂正について参考にするものに,商業登記規則48条3項があります。
これは,「申請書その他の登記に関する書面」につき文字の訂正、加入又は削除をするときの書き方を定めた規定ですが,契約書の文字の訂正,加入又は削除にも活用できます。
それには
①文字の訂正,加入又は削除をする旨及びその字数を欄外に記載し、又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、その範囲を明らかにし、かつ、
➁当該字数を記載した部分又は当該記号を付した部分に押印しなければならない。
③この場合において、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならない。
と規定されていますので,あなたの場合,質問に書かれた方法に加え,欄外に,「3字削除,3字加入」と書き,その横に当事者双方の判を押すべきです。
なお,自筆証書遺言の加除訂正については,民法968条2項が「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と規定していますが,契約書の訂正の場合はそこまでの必要はないでしょう。