遺言執行者④ 相続財産目録調整義務続き➁
1,要件と効果
相続時精算課税制度は,生前贈与であるが,その後相続時に,贈与はなかったものとして,相続税を課すという制度です。
そのため,贈与時は,贈与税が無税になるワクが大きく,そのワクを超える部分も贈与税を一律20%にするという,贈与をしやすい環境にしております。
そして,相続が開始したとき,贈与はなかったものとして,相続税を課すのです。むろん,贈与税を支払っている場合は,それは精算されます。
したがって,この制度の下では,贈与時と相続開始時における財産の評価額が同じならば,相続税の節税にはなりません。
2,狙いは,財産評価の時点
ただ,相続時精算課税制度における贈与財産は,相続開始時ではなく,贈与時の評価額で,相続があったものとされて精算されるという特徴があります。
そこで,値上がり確実な財産があれば,相続時精算贈与を選んだ方が,相続税が安くなります。
例えば,会社経営者が,自社株の将来の値上がりに自信がある場合,例えば,贈与時点で1000万円相当の自社株であっても,将来の相続開始時に1億円になっていると思えば,相続時精算贈与をするのです。そうすると,相続開始時,課税価格は,1億円-1000万円=9000万円も低くなり,相続税の節税になります。
3,リスク
逆に,贈与財産の評価額が,贈与時よりも相続開始時の方が,低くなっている場合,相続税は,贈与をしなかった場合に比べ,高いものになります。
4,申告が必要であり,以後暦年贈与は認められない
この制度を選択するには,申告が必要になります。
また,この制度を利用した後は,暦年贈与を利用することはできません。