コラム
契約書知識 4-2 定義規定の活用
2014年1月15日
1,一義的に明確,というだけでなく,内容を十分に盛り込んだ用語の必要性
契約書は,簡潔で,必要な内容を明確に意味する言葉で書かなければなりません。そのためには,そこに書かれる言葉は,①意味内容が客観的かつ一義的に明確というだけでは足らず,②契約の目的を達成するだけの意味内容を盛り込んだ言葉でなければなりません。前者の要請を満たすには,法令用語や一般用語を正しく使うことで可能ですが,後者の要請を満たすには,定義規定を置かなければなりません。
2,秘密保持条項の例
営業に関する契約書には,不正競争防止法にいう営業秘密の範囲を超えて,秘密の概念(言葉)を作り,その遵守を約束することが多く,そのために定義規定を置くのが一般的です。
例えば,
第○○条 本契約において「秘密情報」とは,甲が乙に業務を委託することにより乙の知り得る甲の取引先等の事業情報,技術情報及び個人情報その他一切の情報をいう。ただし,甲が特に秘密情報とすることを要しない旨を開示時又は開示後に書面で指定したものを除く。
2 本契約において,以下のいずれかに該当する情報は,秘密情報に該当しないものとする。
(1)既に公知又は一般に入手可能であった情報。
(2)甲の行為によらずに公知又は一般に入手可能になった情報。
(3)既に自己が所有又は秘密情報を用いずに甲が独自に開発したことを証明し得る情報。
(4)第三者から秘密保持義務を課されることなく正当に入手した情報。
3,請負契約や業務委託契約における目的物の特定
請負契約は「完成」したかどうかが争いになることが多く,業務委託契約も委託どおり業務をしたかどうかが争いになることが多くあります。
この場合,何ももって「完成」というのか,どの程度の仕事をして「業務」をしたというのかを明確に約束していないと,注文主や委託者は泣きを見なければならなくなります。
「仕事の完成」の意味を,設計図や仕様書を添付した上で,さらに契約目的を具体的にした上で,それを満足させる程度の完成度を明確に書いておくべきです。業務ついても同じです。
例えば,「本件製品とは,別紙仕様書①による材料を用い,同②の製造工程を経たもので,かつ,甲の顧客が高級品であると認識できる程度のものをいう。」などが考えられます。
関連するコラム
- 契約書 第三者のためにする不動産売買契約 2014-02-10
- 契約書知識 16 契約書の表記は公用文表記法による 2014-01-07
- 契約書 賃貸借契約で「公租公課は貸主が負担する。」との約定の意味 2014-11-02
- 新しい契約書案 改正民法に合わせて①「瑕疵」という言葉は使わない 2015-01-06
- 契約書知識 15 契約書の記載事項(2) 2014-01-06
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。