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地方行政 1 自治体行政と政教分離に関する判例

2013年3月6日 公開 / 2013年3月7日更新

テーマ:地方行政

コラムカテゴリ:法律関連

1 自治体が宗教とは全くかかわってはならない、というものではない

最判昭和52年7月13日は、
①憲法89条は政教分離原則を定めたものである。
②政教分離原則は,国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが,
③国家が宗教とのかかわりあいをもつことを全く許さないとするものではなく,
④宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果に鑑み,そのかかわり合いが国の社会的,文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものであると解すべきある。
としています。

2 宗教とかかわり合いが我国の社会的、文化的条件からみて相当とされる限度を超えていない場合(例お地蔵さんの設置のために私有地を各町会に無償貸与した行為)は許される
最判平成4年11月16日は、
①市が各町会に地蔵像の敷地として市有地を無償貸与した行為は、宗教とかかわり合いをもつものであることは否定しえないけれども、その目的はもつぱら世俗的なものであり、その効果も仏教等特定の宗教を援助、助長、促進し、又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められないのであるから、我国における一般的宗教観念や地蔵信仰の習俗化に関する現在の状況等を照らせば、本件市の右各行為は、宗教とかかわり合いが我国の社会的、文化的条件からみて相当とされる限度を超えるものということはできず、憲法20条3項により禁止される宗教的活動には当らない。
②憲法89条は「宗教上の組織若しくは団体」に対する公の財産の支出又は利用を禁止しているものであるが、本件町会等の性格、目的は、地域住民で構成された組織体として、地域社会の福祉の増進と発展等を図るというもので、本件町会等が信仰について意見の一致する者によつて組織されたものではなく、まして地蔵信仰等仏教信仰を目的とする団体ではないし、本件町会等が本件各地蔵像を維持、運営することは宗教的色彩の稀薄な伝統的習俗的行為であつて、特定の宗教を布教、宣伝する宗教的活動とは認められないのであるから、本件町会等は、同条に定める「宗教上の組織若しくは団体」に該当するものではない。したがつて、大阪市が各町会に地蔵像の敷地として市有地を無償貸与する行為は、前認定の右行為の目的、効果、貸与地の面積、規模、本件町会等による本件各地蔵像の維持、運営の目的、効果、並びに地蔵信仰の習俗化についての今日的状況を総合すれば、特定の宗教組織又は宗教団体に対する財産の支出又は利用とはいえず、憲法89条に違反するものではない。
と判示しております。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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