建築 2 市長が結んだ建築請負仮契約の法的性質等
1出来高分の報酬請求は可能
東京高裁昭和46.2.25判決は、
県が発注者、甲が請負業者、乙が下請業者となった県道改良工事で、乙が仕事の途中で倒産した場合でも、乙がした出来高に応じた報酬を甲に対し請求できると判示しました。
すなわち、同判決は「有償である請負契約を締結し仕事の完成を託した以上、たとえ工事の中途で請負契約を合意解除してもすでになされた仕事を基礎としその上に継続してさらに自ら施工し、もしくは他人をして施工せしめ、当初の仕事を完成したような場合は、すでに施工した出来高に対しいささかも報酬を支払わないでもよいとすることは、当事者の意思にかなうゆえんではなく、むしろ反対の意思表示をしないかぎり、註文者(元請負人)は請負人(下請人)の仕事の成果を取得利用することによって利益を得るものというべきであるから、請負人(下請負人)の施工した出来高に応じて、相当の報酬を支払うべきものと解するのが少くとも請負契約を合意解除した当事者の趣旨に適合するものというべきである。」と判示しているのです。
2問題は出来高の中味
もっともこの場合、倒産した会社の出来高をどう査定するかが問題になりますが、同判決は、注文主たる県の査定割合(42%)は、係官が現実に工事現場に赴いて綿密に調査の上査定したものではなく、乙の説明とその提出した工事現場の写真等を基礎にして中間の概算払の便宜上査定したものであったことで採用できないこと、乙が倒産したあと、他の業者が残工事の施行を請負い、若干の工事を行ったけれども、その出来高の割合は明確でないこと、その後甲が同工事を自己の直営に移し完成させたが、これに一定の金額を要したこと、乙の倒産により工事が途中で中止されて再び工事をやり直さなければならなくなったことから工事費がかさんだこと、などを総合判断の上、乙の施行した出来高(乙の孫請会社の分も含む)は全体の30%であったと認定しています。
3 出来高による報酬請求権も、手直し分は控除される
東京地裁昭和46.12.23判決は、「請負人が工事の一部を施工したのみで中止した場合でも,注文者(元請人)側において、すでになされた工事を基礎とし、その上に継続して第三者をして残工事を施工させた場合、注文者(元請人)は請負人(下請人)の仕事の成果を取得利用することによって利益をうるものというべきであるから、請負人(下請人)の施工した工事の出来高に応ずる報酬支払請求権を有するものと解すべきであり、なお第三者が残工事の施工に際し、請負人が施工した工事の一部を手直しした場合、当初の出来高から手直し分を控除して、請負人の出来高を判断すべきものと解せられる。」と判示しているところです。