使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
使用者と労働者との間の個別の労働紛争が多発しています。裁判所を通じて、それを解決する方法としては、①訴訟、②仮処分、③労働審判があります。
当事務所は、常時、10件前後の個別労働事件を扱っていますが、最近、労働審判が便利な制度だと思うようになりました。そこで、暫くの間、本コラムで、労働審判について書いてみたいと思います。
1労働審判の利点は、解決までの時間が短いということです。そして、柔軟で、妥当な結果が得られる可能性が大きいことです。
⑴ 時間の短さは、迅速な手続にあります。労働審判法15条2項は、「労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日において、審理を終結しなければならない。」と規定しているのです。審判期日の回数が3回までに制限されますので、労働者側も、使用者側も、その事件の争点と証拠を第1回期日には、明らかにしておかなければなりません(15条1項)。これは代理人である弁護士には、ずいぶんプレッシャーになることではありますが、逆に、争点を絞れるという点では大きなメリットを感じます。
なお、一般の人、一般の会社には、審判期日が少ないこと、審判までの時間が短いこと、などから、十分な審理がなされないのではないかという心配があるかも分かりませんが、労働審判手続は、その結果である労働審判に対して、労働審判の告知を受けた日から2週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができ(21条1項)、適法な異議の申立てがあったときは、労働審判は、その効力を失う(21条3項)ことになりますので、労働審判が自分の方に不利になる等と考える必要はありません。
⑵ 柔軟で妥当な結果が得られる可能性が大きいというのは、労働審判では、それが適正かつ実効的な解決方法なら、理論的整合性を無視した解決方法が可能な点です。
例えば、解雇された労働者が、解雇は無効であると主張し、使用者との間に、雇用契約の存在の確認と、未払給与の請求をしている事件があるとします。
訴訟では、裁判所は、解雇が無効であると判断すれば、当然、労働者(原告)の主張通り、雇用契約の確認と未払給与の支払いを命ずる判決を言い渡さなければなりませんが、労働審判では、解雇は無効だと判断しても、使用者に一定の解決金の支払いを命じ、使用者がその支払いをしたときは雇用契約を終了させる審判も可能なのです。
労働審判制度が、「紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ること」を目的としている(1条)から、このような解決方法も可能とされているのです。