使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
1 原則有効
就業規則上、時間外勤務手当を支給する代わりに、一定額の手当(名目は営業手当でも、業務手当、あるいは、職務手当でも良いが、趣旨が時間外勤務に対する定額手当であることが明確でなければならない)を支給することが定められている場合、原則として、その支払いは、時間外割増賃金の固定給の意義を有するとされています。この場合、実際に支払われた手当の額が時間外割増賃金の額を上回るときは問題はないが、下回るときは使用者は差額の支払義務があるとされています(東京地裁平成10.6.5外多数)。
2 無効になる場合
時間外勤務手当とそれ以外の賃金とが特定明示されていない場合は、時間外勤務に対する定額手当は認められません。東京地裁平成14.3.28は、「職務手当の一部が名目はともかく実質的に時間外割増賃金の趣旨で支払われたというためには,職務手当のうち時間外割増賃金の支払に相当する部分を明確に他と峻別できることが必要である」と判示しているところです。同判決は、「係長以上の「管理職」については、一定の時間外勤務に対する割増賃金に見合う部分を職務手当に含ませる意図を有していたことを一応は推認することができるが、係長以上の者に対し支払われる職務手当のうち、時間外労働に対して支払われる額及びこれに対応する時間外労働時間数は特定明示されておらず、これを時間外割増賃金の一部と扱うことはできず、係長以上の者に対する職務手当は、全額これを基礎賃金とせざるを得ない」と言っております。
3 有効になる場合と無効になる場合の大きな違い
営業手当なり職務手当なりが、時間外勤務に対する定額手当とされるときは、①その金額の範囲で、時間外勤務手当の支払義務はないことになり、また、②その手当の額は割増賃金の基礎となる賃金には含まれないことになりますが、その手当が時間外勤務に対する定額手当と認められないときは、その手当の金額を含めた賃金が基礎賃金とされた上で、時間外勤務手当を支払わなければなりません。
手当の趣旨は、明確にしていなければなりません。