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使用者のための労働問題 3 使用者の労働時間把握義務

菊池捷男

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テーマ:労働

1 賃金台帳調製義務
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、下記の事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならないことになっています(労基法108条、労基法施行規則54条1項)。
① 氏名
② 性別
③ 賃金計算期間
④ 労働日数
⑤ 労働時間数
⑥ 超過勤務時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数
⑦ 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
⑧ 労基法24条1項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額

2 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準を定めた平成13年4月6日基発339号厚生労働省労働基準局長通達(「13年通達」)
対象は全事業者と、いわゆる管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者が対象になります(なお、本基準の適用から除外する労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があります)。
具体的な内容
⑴始業・終業時刻の確認及び記録
 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
⑵始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
⑶自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
⑷労働時間の記録に関する書類の保存
 労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。
⑸労働時間を管理する者の職務
 事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。
⑹労働時間短縮推進委員会等の活用
 事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間短縮推進委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

3 1週間に44時間、1日に8時間まで労働させることができる事業
労基法施行規則25条1項は、下記の事業のうち常時10人未満の労働者を使用
するものについては、1週間に44時間、1日に8時間まで労働させることができると規定しています。
① 物品の販売,配給,保管若しくは賃貸又は理容の事業
② 映画の映写,演劇その他興行の事業
③ 病者又は虚弱者の治療,看護その他保健衛生の事業
④ 旅館,料理店,飲食店,接客業又は娯楽場の事業
この事業では、使用者は,1週間については44時間を超えて労働させて初めて,残業代(労基法に基づく時間外割増賃金)の支払が必要となります。
 なお,この例外規定が適用される場合であっても,1日当たりの労働時間は8時間が上限とされていますので,1日8時間を超えて働かせた場合には,1週間44時間に範囲であっても、残業代(時間外割増賃金)の支払が必要となります。

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