使用者のための労働問題 性同一性障害者に対する態度
1産業医と事業者の間は、委任契約
事業者と産業医とは、委任契約の当事者。契約目的は、産業医としての職務を、善良な管理者の注意義務をもって処理すること。
⑴ 産業医の事業者に対する勧告(指摘・報告)義務
労働者に健康上問題があることを知った産業医には、会社にそのことを指摘・報告する義務がある(北興化工機事件札幌地判平16.3.26)。
⑵事業者が労働者の就労能力を判断するときの産業医からの勧告遵守義務
会社が従業員の就労能力を判断するために、常に産業医の判断を経なければならないというものではない。会社が当該従業員の主治医の判断に基づいて就労能力を判断したことに問題はない(東京地判平18.2.6)
2 産業医と労働者との間には、契約関係はない。
⑴ 産業医のする健康診断の目的
産業医による健康診断は、労働者に対し、当該業務上の配慮をする必要があるか否かを確認することを主たる目的とするものであり、労働者の疾病そのものの治療を行うことを目的としたものではない。・・・仮に原告の高血圧症が、当時、降圧剤の投薬を開始するのが望ましい状態であったとしても、産業医がこれをしなかったことをもって、直ちに産業医に過失があるとはいえない(静岡地判平11.11.25)。なお、この件は、会社の安全配慮義務違反も否定。
⑵ 産業医は、事業者の労働者に対する義務(安全配慮義務等)の履行補助者になる
すなわち、産業医の判断ミスは、会社の判断ミスになる。
過重労働により脳幹出血死亡事件で、会社は、産業医が会社に対し業務軽減措置を採るべき指示をしていなかったので、過失はないと争ったが、判決は、その事実があっても会社の業務軽減措置義務に影響を与えるものではない(最判平12.10.13)と判示。